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大学或問 / 『大学或問』明察を戒める理由

(問)人君の德は至明より大なるはなし、然かるに明察を戒むるは何ぞや、 (答)至明姦を照せば百邪蔽ことあたはずといへども自智をくらます、天下の智を用ひよく諫を納れ、謗を聞けば身安く心樂み、國治り天下平にして令名後世にあらはる、是其至明なる所也、故に君道は天に則る剛に過べからず、用九首なくして吉なる是也、威武を耀さず、刑罰を峻くせず、心を降して言を受け、温恭にして下に接す、其剛を濟ひ其明を和する所なりといへり、

新字:(問)人君の徳は至明より大なるはなし、然かるに明察を戒むるは何ぞや、 (答)至明姦を照せば百邪蔽ことあたはずといへども自智をくらます、天下の智を用ひよく諫を納れ、謗を聞けば身安く心楽み、国治り天下平にして令名後世にあらはる、是其至明なる所也、故に君道は天に則る剛に過べからず、用九首なくして吉なる是也、威武を耀さず、刑罰を峻くせず、心を降して言を受け、温恭にして下に接す、其剛を済ひ其明を和する所なりといへり、

書き下し

(問)人君の德は至明より大なるはなし、然かるに明察を戒むるは何ぞや、 (答)至明姦を照せば百邪蔽ことあたはずといへども自智をくらます、天下の智を用ひよく諫を納れ、謗を聞けば身安く心樂み、國治り天下平にして令名後世にあらはる、是其至明なる所也、故に君道は天に則る剛に過べからず、用九首なくして吉なる是也、威武を耀さず、刑罰を峻くせず、心を降して言を受け、温恭にして下に接す、其剛を濟ひ其明を和する所なりといへり、

現代語訳

問う。人君の徳は至明より大きなものはない。それなのに明察を戒めるのはなぜか。 答える。至明が奸悪を照らせば、あらゆる邪悪も隠れることができない。しかし、それは自分の智を暗ませる。天下の智を用い、よく諫めを受け入れ、非難を聞けば、身は安らかで心は楽しみ、国は治まり天下は平らかになり、よい名が後世に現れる。これがその至明なところである。だから君の道は天にならう。剛に過ぎてはならない。用九に首なくして吉、というのがこれである。威武を輝かさず、刑罰を厳しくせず、心を低くして言葉を受け入れ、穏やかで恭しく下に接する。それが、その剛を補い、その明を和らげるところである、と言われる。

解説

前の条で明察を戒めた理由を、問答の形で補う一節です。蕃山は、鋭く見抜く力そのものを否定しているのではありません。見抜く力に頼って自分の智を絶対視すると、かえって周囲の智が使えなくなる、という点を戒めています。易の用九で、群れの龍に首がなければ吉というのは、先頭に立って突出しない意と読まれます。有能な管理職ほど、自分の判断だけで裁いてしまいがちです。力量を示すよりも、人の言葉を受けて決めることで、結果として組織全体の見る力が上がります。強さを和らげる姿勢が、長く続く信頼につながります。
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この章句が説くこと

至明明察自智剛を済う用九温恭

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