智囊 / 靈變・沈括
沈括知延州時,種諤次五原,值大雪,糧餉不繼。殿值劉歸仁率眾南奔,士卒三萬人皆潰入塞,居民怖駭。括出東郊餞河東歸師,得奔者數千,問曰:「副都總管遣汝歸取糧,主者為何人?」曰:「在後。」即諭令各歸屯,未旬日,潰卒盡還。括出按兵,歸仁至,括曰:「汝歸取糧,何以不持兵符?」因斬以徇,〔述評〕括在鎮,悉以別賜錢為酒,命廛市良家子馳射角勝。有軼群之能者,自起酌酒勞之。邊人歡激,執弓傅矢,皆恐不得進。越歲,得徹札超乘者千餘,皆補中軍義從,威聲雄他府。真有用之才也!
新字:沈括知延州時,種諤次五原,値大雪,糧餉不継。殿値劉帰仁率衆南奔,士卒三万人皆潰入塞,居民怖駭。括出東郊餞河東帰師,得奔者数千,問曰:「副都総管遣汝帰取糧,主者為何人?」曰:「在後。」即諭令各帰屯,未旬日,潰卒尽還。括出按兵,帰仁至,括曰:「汝帰取糧,何以不持兵符?」因斬以徇,〔述評〕括在鎮,悉以別賜銭為酒,命廛市良家子馳射角勝。有軼群之能者,自起酌酒労之。辺人歓激,執弓傅矢,皆恐不得進。越歳,得徹札超乗者千余,皆補中軍義従,威声雄他府。真有用之才也!
書き下し
沈括は延州に知たりし時、種諤は五原に次り、大雪に値い、糧餉は継がず。殿値の劉帰仁は衆を率いて南に奔り、士卒三万人は皆な塞に潰れ入り、居民は怖れ駭く。括は東郊に出でて河東に帰る師を餞し、奔る者の数千を得て、問いて曰く、「副都総管は汝を遣わして帰りて糧を取らしむ。主者は何人か」と。曰く、「後に在り」と。即ち諭して各々屯に帰らしめ、未だ旬日ならずして、潰卒は尽く還る。括は出でて兵を按ず。帰仁至るや、括曰く、「汝は帰りて糧を取るに、何を以て兵符を持たざるか」と。因りて斬りて以て徇す。〔述評〕括は鎮に在りて、悉く別賜の銭を以て酒と為し、廛市の良家の子に命じて馳射して勝を角わしむ。軼群の能有る者は、自ら起ちて酌して之を労う。辺人は歓激し、弓を執り矢を傅え、皆な進むを得ざるを恐る。歳を越えて、徹札超乗する者千余を得、皆な中軍の義従に補し、威声は他府に雄たり。真に用有るの才なり。
現代語訳
沈括が延州の長官だったとき、種諤は五原に駐屯していたが、大雪に遭い、兵糧の補給が続かなくなった。殿軍の劉帰仁は兵を率いて南に逃げ、兵卒三万人がみな要塞内に潰れ込み、住民は恐れ驚いた。括は東の郊外に出て、河東に帰る軍を見送るふりをして、逃げてきた者数千人を集め、尋ねた。「副都総管は、お前たちを遣わして帰って兵糧を取らせたのだな。責任者は誰だ」。兵は「後ろにいます」と答えた。括はすぐに言い聞かせて、それぞれ元の駐屯地へ帰らせ、十日もたたないうちに、潰走した兵たちはみな戻った。括は出て兵を点検した。帰仁が着くと、括は言った。「お前は帰って兵糧を取るのに、どうして兵符を持っていないのか」。そして斬って、見せしめにした。〔述評〕括は任地で、特別に賜った金をすべて酒にあて、市中の良家の子弟に馬を走らせ弓を射て競わせた。群を抜いた腕のある者には、自ら立って酒をついでねぎらった。辺境の人々は喜び感激し、弓を取り矢をつがえ、みな前に出られないのではないかと心配した。一年経つと、鎧の札を射抜き馬に飛び乗る者が千人余り得られ、みな中軍の義勇兵に取り立て、威名は他の府よりも高くなった。真に役に立つ人材である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『韓非子』飾邪第十九故に先王は賞を明らかにして以て之を勧め、刑を厳にして以て之を威す。賞刑明らかなれば、則ち民死を尽くす。民死を尽くせば、則ち兵強く主尊し。刑賞察らかならざれば、則ち民功無くして得んことを求め、罪有りて幸ひに免れんとす。則ち兵弱く主卑し。故に先王賢佐は力を尽くし智を竭くす。故に曰く、公私は明らかにせざるべからず、法禁は審らかにせざるべからずと。先王之を知れり。
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『韓非子』備內第十七殺しては必ず當り、罪は赦さず、則ち姦邪、其の私を容るる所無し。
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『韓非子』主道第五明君の道は、臣陳言して当たらざるを得ず。是の故に明君の賞を行ふや、曖乎として時雨の如く、百姓其の沢を利とす。其の罰を行ふや、畏乎として雷霆の如く、神聖も解くこと能はざるなり。
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『韓非子』詭使第四十五民力を尽くし、下の死を易ふる所以なり、今戦勝攻取の士は労して賞霑はず、而して卜筮・視手理・狐蠱にして前に順辞を為す者は日に賜はる。
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『韓非子』內儲說上七術第三十魏の惠王ト皮に謂いて曰く、「子寡人の聲聞を聞く、亦た何如。」...對えて曰く、「臣王の慈惠なるを聞けり。」...王の功亡ぶるに至らん。...夫れ慈とは忍びずして、とは、與うるを好むなり。忍びざれば則ち過ち有るを誅せず、予うるを好めば則ち功有るを待たずして賞す。
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『韓非子』外儲說左下第三十三説は文子の直言、武子の杖を用ふると、子産の忠諫、子国の譙怒すると、梁車法を用ひて成侯璽を収むると、管仲公を以てして国人謗怨するとに在り。一。孔子衛に相たり、弟子子皐獄吏と為り、人の足を刖る、跀せらるる所の者門を守る。人に孔子を衛君に悪む者有り、曰く、「尼乱を作さんと欲す。」衛君孔子を執へんと欲す。孔子走り、弟子皆逃ぐ。子皐従ひて門を出づ、跀危之を引きて之を門下の室中に逃がす、吏追ふも得ず。夜半、子皐跀危に問ひて曰く、「吾主の法令を虧くこと能はずして親ら子の足を跀る、是れ子の仇に報ゆるの時なり、而るに子何の故に乃ち肯へて我を逃がす。我何を以て此を子に得たる。」跀危曰く、「吾が足を断たるるや、固より吾が罪之に当る、奈何ともすべからず。
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