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智囊 / 靈變・布商吳生

吳有書生假借僧舍,見僧每出,必鎖其房,甚謹。一夕忘鎖,生縱步入焉,房甚曲折,幾上有小石磬,生戲擊之,旁小門忽啟,有少婦出,見生,驚而去,生亦倉惶外走。僧適挈酒一壺自外入,見門未鑰,愕然,問生適何所見,答曰:「無有。」僧怒,掣刀擬生曰:「可就死,不可令吾事敗死他人手。」生泣曰:「容我醉後,公斷吾頭,庶懵然無覺也。」僧許之,生佯舉杯告曰:「庖中鹽菜乞一莖。」僧乃持刀入廚,生急脫布衫塞其壺口,酒不泄,重十許斤,潛立門背,伺僧至,連擊其首數十下,僧悶絕而死。問少婦,乃謀殺其夫而奪得者,分僧橐而遣之。

新字:呉有書生仮借僧舎,見僧毎出,必鎖其房,甚謹。一夕忘鎖,生縦歩入焉,房甚曲折,幾上有小石磬,生戯撃之,旁小門忽啓,有少婦出,見生,驚而去,生亦倉惶外走。僧適挈酒一壺自外入,見門未鑰,愕然,問生適何所見,答曰:「無有。」僧怒,掣刀擬生曰:「可就死,不可令吾事敗死他人手。」生泣曰:「容我酔後,公断吾頭,庶懵然無覚也。」僧許之,生佯舉杯告曰:「庖中塩菜乞一茎。」僧乃持刀入廚,生急脱布衫塞其壺口,酒不泄,重十許斤,潜立門背,伺僧至,連撃其首数十下,僧悶絶而死。問少婦,乃謀殺其夫而奪得者,分僧橐而遣之。

書き下し

呉に書生有り、僧舎を仮借す。僧の出づる毎に、必ずその房に鎖すを見るに、甚だ謹めり。一夕、鎖すを忘る。生は歩を縦にして入る。房は甚だ曲折し、几上に小さな石磬有り。生は戯れにこれを撃つに、旁の小門が忽ち啓き、少婦出づる有り。生を見て驚きて去り、生も亦た倉惶として外に走る。僧は適々酒一壺を挈えて外より入り、門の未だ鑰さざるを見て愕然とし、生に適に何の見る所かを問う。答えて曰く、「無し」と。僧は怒り、刀を掣きて生に擬し、曰く、「就死すべし、吾が事をして敗れしめ他人の手に死するを令すべからず」と。生は泣きて曰く、「我の醉い後を容せ。公は吾が頭を断て、庶くは懵然として覚る無からん」と。僧はこれを許す。生は佯りて杯を挙げ、告げて曰く、「庖中の塩菜を一茎乞う」と。僧は乃ち刀を持ちて廚に入る。生は急ぎ布衫を脱ぎてその壺口に塞ぎ、酒泄れず、重さ十許斤、潜かに門背に立ち、僧の至るを伺い、連りにその首を撃つこと数十下、僧は悶絶して死す。少婦に問えば、乃ち其の夫を謀殺して奪い得たる者なり。僧の橐を分かちて、これを遣わせり。

現代語訳

呉に書生がいて、僧院の一室を借りていた。僧は出かけるたびに、必ず自分の部屋に鍵をかけ、とても用心深かった。ある夜、鍵をかけ忘れた。書生は何気なくその部屋に入ってみた。部屋は奥が入り組んでおり、机の上に小さな石の磬があった。書生がふざけて打つと、脇の小さな戸が急に開き、若い女が出てきた。書生を見て驚いて引っ込み、書生もあわてて外へ走り出た。僧はちょうど酒の壺を提げて帰ってきて、戸に鍵がかかっていないのを見て愕然とし、書生に何を見たかを問いただした。書生は「何も見ていません」と答えた。僧は怒って刀を抜き、書生に突きつけて言った。「死んでもらう。わしの事が露見して、他人の手にかかって死ぬわけにはいかん」。書生は泣いて言った。「どうか酔いが回るまで待ってください。そのあとで首を斬ってください。そうすれば、何も分からぬまま死ねます」。僧はこれを許した。書生は杯を持ち上げるふりをして、「台所の塩漬けの野菜を一本いただけませんか」と頼んだ。僧は刀を持ったまま台所に入った。書生はすばやく布の上着を脱ぎ、酒壺の口に詰めたので、酒がこぼれず、重さは十斤余りあった。書生はひそかに戸の陰に立ち、僧が来るのを待って、その頭を数十回も続けざまに打ち、僧は気を失って死んだ。女に事情を尋ねると、夫を殺されて奪われた人だった。書生は僧の財産を分けて、女を帰した。

解説

酒を飲んで酔ってから斬ってほしい、という願いは、前の話と同じく相手の気を緩める手です。ここでは酒壺という身近な物が武器に変わる、状況を見渡す目がポイントです。刀を持つ僧が台所へ向かう間に、書生は武器を作り、待ち伏せの位置に立ちました。危機のとき、手元の道具や環境を別の目で見直す発想が大切です。ビジネスの現場でも、与えられた資源をそのまま使うのではなく、別の用途に転用して打開する力が問われる場面があります。さらに、囚われの女を助けた結末は、自分の安全だけで終わらない行動の価値も示します。

この章句が説くこと

小石磬容我酔後布衫塞壺危機対応転用機転

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