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智囊 / 謬數・段秀實・馮瓚

涇川王童之謀作亂,期以辛酉旦警嚴而發。前夕有告之者,段秀實陽召掌漏者怒之,以其失節,令每更來白,輒延之數刻。遂四更而曙,童之不果發。〔述評〕呂翰據嘉州叛,曹翰奪其城,賊約三更復來攻,翰覘知,密戒司更使緩,向晨猶二鼓,賊眾不集而潰,因而破之。馮瓚知梓州。才數日,會偽蜀軍將上官進嘯聚亡命三千餘眾,劫村民,夜攻州城,瓚曰:「賊乘夜掩至,此烏合之眾,以棰梃相擊耳,可持重以鎮之,待旦自潰矣。」城中止有騎兵三百,使守諸門。瓚坐城樓,密令促其更籌,未夜分,擊五鼓,賊驚遁,因縱兵追之,擒進斬於市,郡境以安。〔評〕孫臏減灶,虞詡增之;段秀實延更,馮瓚促之。事反功同,用之不窮。

新字:涇川王童之謀作乱,期以辛酉旦警厳而発。前夕有告之者,段秀実陽召掌漏者怒之,以其失節,令毎更来白,輒延之数刻。遂四更而曙,童之不果発。〔述評〕呂翰拠嘉州叛,曹翰奪其城,賊約三更復来攻,翰覘知,密戒司更使緩,向晨猶二鼓,賊衆不集而潰,因而破之。馮瓚知梓州。才数日,会偽蜀軍将上官進嘯聚亡命三千余衆,劫村民,夜攻州城,瓚曰:「賊乗夜掩至,此烏合之衆,以棰梃相撃耳,可持重以鎮之,待旦自潰矣。」城中止有騎兵三百,使守諸門。瓚坐城楼,密令促其更籌,未夜分,撃五鼓,賊驚遁,因縦兵追之,擒進斬於市,郡境以安。〔評〕孫臏減灶,虞詡增之;段秀実延更,馮瓚促之。事反功同,用之不窮。

書き下し

涇川の王童之、乱を作さんと謀り、辛酉の旦、警厳を期して発せんとす。前夕、之を告ぐる者有り。段秀実、陽に掌漏者を召して之に怒り、其の節を失うを以て、更ごとに来たりて白さしめ、輒ち之を延ばすこと数刻。遂に四更にして曙け、童之、果たさず。〔述評〕呂翰、嘉州に拠りて叛す。曹翰其の城を奪う。賊、三更に復た来攻せんと約す。翰、覘いて知り、密かに司更を戒めて緩やかならしむ。向晨なお二鼓、賊の衆集まらずして潰え、因りて之を破る。馮瓚、梓州に知たり。才かに数日、会たま偽蜀の軍将上官進、亡命三千余の衆を嘯聚し、村民を劫かし、夜に州城を攻む。瓚曰く、「賊は夜に乗じて掩い至る、此れ烏合の衆にして、棰梃を以て相い撃つのみ。持重して以て之を鎮むべし。旦を待たば自ら潰えん」と。城中には止だ騎兵三百有るのみ、諸門を守らしむ。瓚、城楼に坐し、密かに其の更籌を促さしむ。未だ夜分ならざるに、五鼓を撃つ。賊驚きて遁る。因りて兵を縦ちて之を追い、進を擒にして市に斬る。郡境以て安んず。〔評〕孫臏は灶を減じ、虞詡は之を増す。段秀実は更を延ばし、馮瓚は之を促す。事は反するも功は同じ、用うること窮まらず。

現代語訳

涇川の王童之が反乱をくわだて、辛酉の日の夜明けに警戒の合図を出して決起しようと予定した。前夜、これを密告する者がいた。段秀実は、わざと時刻係を呼んで、時を誤ったと怒り、各更の時刻ごとに自分に報告に来させ、そのたびに数刻ずつ引き延ばした。こうして四更でようやく明るくなり、王童之は決行できなかった。〔述評〕呂翰が嘉州に拠って反乱を起こし、曹翰がその城を奪った。賊は三更に再び攻めると約束した。曹翰はこれを察知し、ひそかに時刻係に命じて時を遅らせた。夜明け前なのに、まだ二鼓で、賊は兵が集まらずに崩れ、そこを撃ち破った。馮瓚が梓州の知事となり、わずか数日のとき、偽蜀の将軍上官進が亡命者三千余りを集め、村の民を脅かし、夜に州城を攻めた。馮瓚は「賊は夜に乗じて急襲してきたが、これは烏合の衆で、棒きれで撃ち合うだけだ。落ち着いて鎮めよう。夜が明ければ自然に崩れる」と言った。城中には騎兵三百しかおらず、それぞれ城門を守らせた。馮瓚は城楼に座り、ひそかに時刻の更籌を急がせた。まだ真夜中にならないうちに五鼓を打たせた。賊は驚いて逃げた。そこで兵を放って追撃し、上官進を捕らえて市で斬った。州境は安定した。〔評〕孫臏は竈の数を減らし、虞詡は増やした。段秀実は更を延ばし、馮瓚は縮めた。手段は逆なのに功は同じで、用い方は尽きない。

解説

時刻という誰もが当然視する基準を操作して、敵の計画を狂わせる話が並びます。段秀実は夜を引き延ばして決起の時を失わせ、曹翰も同様に遅らせ、馮瓚は逆に早めて、賊が夜明けを待たずに逃げるよう仕向けました。馮夢龍が孫臏と虞詡の竈の例を挙げるのは、同じ道具を反対に使っても有効という点を示すためです。管理職にとっては、締め切りや会議の時刻、情報の出し方といった当たり前の基準も、危機対応では武器になるという示唆があります。ただし、虚偽が公的な信用を損なう場合は慎重にすべきです。

この章句が説くこと

更を延ばす烏合の衆五鼓孫臏虞詡危機対応

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