智囊 / 剖疑・張昺
樹顛有巨巢,巢中有三婦人,墮地,冥然欲絕。命扶而灌之以湯,良久始蘇。問:「何以在此?」答曰:「昔年為暴風吹至,身在高樓,與三少年歡宴,所食皆美饌。時時俯瞰樓下,城市歷歷在目,而無階可下。少年往來,率自空中飛騰,不知乃居樹巢也。」公悉訪其家還之。中一人,正輿中攝去者,訟始解。公以其木修公廨數處,而所蔭地復為良田。〔馮述評〕《田居乙記》載,桂陽太守張遼家居買田,田中有大樹十餘圍,扶疏蓋數畝地,播不生谷。遣客伐之,血出,客驚怖,歸白遼。遼大怒曰:「老樹汗出,此何等血?」因自行斲之,血大流灑。遼使斲其枝,上有一空處,白頭公可長四五尺,忽出往赴遼。遼乃逆格之,凡殺四頭。左右皆怖伏地,而遼恬如也。徐熟視,非人非獸,遂伐其木。其年應司空辟侍御史、兗州刺史。事與此相類。
新字:樹顛有巨巣,巣中有三婦人,堕地,冥然欲絶。命扶而灌之以湯,良久始蘇。問:「何以在此?」答曰:「昔年為暴風吹至,身在高楼,与三少年歓宴,所食皆美饌。時時俯瞰楼下,城市歴歴在目,而無階可下。少年往来,率自空中飛騰,不知乃居樹巣也。」公悉訪其家還之。中一人,正輿中摂去者,訟始解。公以其木修公廨数処,而所蔭地復為良田。〔馮述評〕《田居乙記》載,桂陽太守張遼家居買田,田中有大樹十余囲,扶疏蓋数畝地,播不生谷。遣客伐之,血出,客驚怖,帰白遼。遼大怒曰:「老樹汗出,此何等血?」因自行斲之,血大流灑。遼使斲其枝,上有一空処,白頭公可長四五尺,忽出往赴遼。遼乃逆格之,凡殺四頭。左右皆怖伏地,而遼恬如也。徐熟視,非人非獣,遂伐其木。其年応司空辟侍御史、兗州刺史。事与此相類。
書き下し
樹の顛に巨巣有り、巣中に三婦人有り。地に墮ち、冥然として絶えんと欲す。命じて扶けて之に灌ぐに湯を以てす。良久しくして始めて蘇る。問う、「何を以て此に在るか」と。答えて曰く、「昔年、暴風の為に吹かれて至り、身は高楼に在り。三少年と歓宴す。食う所は皆な美饌。時時に楼下を俯瞰すれば、城市歴歴として目に在るも、階の下るべき無し。少年の往来するは、率ね空中より飛騰す。乃ち樹巣に居るを知らざりき」と。公、悉く其の家を訪ねて之を還す。中の一人は、正に輿中より攝り去られし者にして、訟、始めて解く。公、其の木を以て公廨数処を修め、而して蔭する所の地、復た良田と為る。〔馮述評〕『田居乙記』に載す。桂陽太守張遼、家居して田を買う。田中に大樹の十余囲なる有り、扶疏として数畝の地を蓋い、播けども谷を生ぜず。客を遣わして之を伐らしむるに、血出ず。客、驚怖し、帰りて遼に白す。遼、大いに怒りて曰く、「老樹、汗出ず。此れ何等の血ぞ」と。因りて自ら行きて之を斲れば、血、大いに流灑す。遼、其の枝を斲らしむれば、上に一空処有り、白頭公の長さ四五尺なる者、忽ち出でて遼に赴く。遼、乃ち逆えて之を格ち、凡そ四頭を殺す。左右、皆な怖れて地に伏すも、遼は恬如たり。徐ろに熟視すれば、人に非ず獣に非ず。遂に其の木を伐る。其の年、司空の辟に応じて侍御史、兗州刺史となる。事は此れと相類す。
現代語訳
樹のてっぺんに巨大な巣があり、その中に三人の女性がいた。地に落ちて、気を失って死にそうであった。助け起こし、お湯を飲ませると、しばらくしてようやく蘇った。「どうしてここにいるのか」と尋ねると、答えた。「昔、暴風に吹き飛ばされて来て、気づくと高い楼にいました。三人の若者と宴を楽しみ、食べ物はみな美味でした。ときどき楼の下を見下ろすと、町が目の前にはっきり見えるのに、降りる階段がありませんでした。若者たちが行き来するのは、いつも空中から飛んでいました。樹の上の巣にいるとは知りませんでした」。公はその家をすべて探して送り返した。その中の一人は、まさに輿の中から連れ去られた花嫁で、訴訟はようやく解けた。公はその樹木で役所の建物数か所を修繕し、陰になっていた土地はまた良田となった。〔馮夢龍の評〕『田居乙記』に載る。桂陽太守の張遼は、家にいて田を買った。田の中に十抱え余りの大樹があり、枝が数畝の土地を覆い、種をまいても穀物ができなかった。客を遣わして伐らせると血が出た。客は驚き恐れ、帰って遼に報告した。遼は大いに怒って言った。「老木が汗をかいただけだ。何の血だ」。自ら出向いて斧を入れると、血が大いに飛び散った。遼がその枝を切らせると、上に空洞があり、長さ四、五尺の白髪の翁が忽然と出て遼に向かってきた。遼は迎え撃って打ち、合計四匹を殺した。左右の者はみな恐れて地に伏したが、遼は平然としていた。ゆっくりよく見ると、人でも獣でもなかった。そこで樹を伐った。その年、司空の招きに応じて侍御史、兗州刺史となった。事は本話と似ている。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』得情・鄭洛書・許進・姚公・張昺鄭洛書、上海県に知たり。嘗て履端に郡に謁し、帰りて海口に泊す。沈屍有り、圧すに石磨を以てするを、忽ち之を見て、歎じて曰く、「此れ必ず客死ならん。故に余の告ぐる莫きなり」と。人を遣わして之を偵わしむるに、近村の民家に石磨有り、其の牡を失えり。執え来たりて相吻合す。一訊して即ち伏す。果たして江西の売卜人にして、歳晏れて将に帰らんとするに、房主、其の財を利して殺せるなり。単県に田作する者有り、其の婦、之に餉す。食い畢わりて死す。翁、故に曰く、「婦の意なり」と。官に陳ぶ。箠楚に勝えず、遂に誣服す。是れより天久しく雨ふらず。許襄毅公、時に山東に官たり。曰く、「獄に其れ冤有らんか」と。乃ち親ら其の地を歴め、獄囚を出して遍く審す。餉婦に至り、乃ち曰く、「夫婦の相守るは、人の至願。鴆毒もて人を殺すは、計の至密なる者なり。焉んぞ自ら田に餉して之を鴆する者有らんや」と。遂に其の餽する所の飲食、経る所の道路を詢う。婦曰く、「魚湯と米飯にして、荊林より度り、他の異なる無きなり」と。公乃ち魚を買い飯を作り、荊花を其の中に投じて、之を狗彘に試むるに、死せざる無し。婦の冤乃ち白し、即日大雨注ぐが如し。蘇人、商に外に出づ。其の妻は雞数隻を蓄えて以て其の帰りを待つ。数年にして方に返り、雞を殺して之を食らえば、夫即ち死す。隣人は外奸有るかと疑い、之を太守姚公に首す。鞫するも他の故無し。意うに其の雞に毒有りと。人をして老雞を覓め、当に死すべき囚と遍く之を食わしむるに、果たして二人を殺す。獄遂に白し。蓋し雞は蜈蚣百虫を食えば、久しくして毒を蓄う。故に養生家は雞の老いたるを食わず、又た夏は雞を食わず。
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『智囊』剖疑・張昺県に羊角巫なる者有り、能く人を咒して死せしむ。前令は禍を畏れ、毎に之を優礼す。其の法は、人の年甲を木橛に書し、生羊を取りて糞道に向かいて一たび擊つ。羊僕れて人死す。張昺、之を知りて発せず。一日、老婦の泣訴する有り、巫、其の子を殺す、と。張昺、人を遣わして巫を捕えしむ。巫、山に在りて已に覚り、其の徒に謂いて曰く、「張公は正人なり。吾、避くる能わず。吾が命尽きたり」と。乃ち手を束ねて縛に就く。至りて杖たること百数、損なう無く、反って杖つ者の手を傷つく。張昺、其の縛を釈き、之に謂いて曰く、「汝、能く杖つ者を咒して死せしめ、復た之を咒して生かさば、吾、即ち汝を宥さん」と。之を試みて験せず。遂に之を獄に収む。夜半、烈風に石を飛ばし、屋瓦索索として崩るるが若し。張昺、巫の所為なるを知り、起ちて衣冠を正し、香を焚き肃坐す。旦に及び、巫を取りて庭に至らしむ。衆、皆な巫を以て神人と為し、咸な之を釈さんことを請う。張昺、許さず。声を厲しくして巫を叱す。巫、悚懼し、忽ち珠一顆を墮とす。光焔、庭を燭らす。又た法書一帙を墮とす。掌の如く大なり。張昺、僚属を会し、其の書を焚き、其の珠を砕きて問うて曰く、「今、何如せんと欲す」と。巫、答えず、即ち僕れて死す。衆、請いて舁ぎ出さんとす。張昺曰く、「未だし」と。躬ら往きて獄中に瘞め、圧すに巨石を以てす。時に暑月、三日を越えて発き視れば、腐れり。巫の患い、遂に息む。〔馮述評〕巫の術も亦た人の禍福利害の念に乗じて霊なり。張昺は絶えて疑畏無し。故に邪術、自ずから入る能わず。道士に隠形の術を善くし、多く人の婦女を淫する者有り。公、擒えて至らしめ、痛く之を鞭つに、了に苦しむ所無く、已にして其の形も並びに見えず。公、他出に托して、径ちに馳せて其の居に詣り、縛して帰り、印を背に用いて、然る後に之を鞭つ。乃ち声に随って呼嗥し、竟に杖下に死す。
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『智囊』詰奸・臨海令臨海県の新秀才を迎えて黌宮に適くに、女の窺い見て一生の韶美なるを悦ぶ有り。一賣婆の傍に在りて曰く、「此れは吾が鄰家の子なり。小娘子の為に執伐せば、成り、佳偶ならん」と。賣婆は女の意を以て生を誘うも、生は従わず。賣婆に子の無頼なる有り、因りて生に假りて夜に往く。女は弁ずること能わず。一日、其の家は客を舎す。夫婦は因りて女を移し、女の榻を以て之を寝ぬ。夜に人の其の双首を断ちて以て去る有り。明発して以て県に聞こゆ。令は其の家の之を殺せしかと以うも、橐装は損うこと無し。之を殺して何をか為さん。乃ち問う、「榻は向に誰氏を寝ぬか」と。曰く、「是れ其の女なり」と。令曰く、「之を知れり」と。立ちどころに其の女を逮え、威を作して之を震わせて曰く、「汝の姦夫は誰なるか」と。曰く、「某秀才なり」と。生を逮え至らしむれば、曰く、「賣婆の語は有り。何ぞ嘗て其の家に至らん」と。又女に問う、「秀才の身に何の記有るか」と。曰く、「臂に痣有り」と。之を視れば有ること無し。令は沈思して曰く、「賣婆に子有りや」と。其の子を逮えて、臂を視れば痣有り。曰く、「人を殺せし者は、汝なり」と。之を刑すれば、即ち自ら輸服す。蓋し其の夜に駢首を捫り得て、女に他の姦有りと以い、之を殺せしなり。生は是に由りて釈くを得たり。
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