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竹馬抄 / 戦の心得と子孫への書

あざむく事有まじき也、戰ふヿには、おほけなくとも心を高く持て、我にまされる剛の者あらじと思ひつめて、人の力にもなり、人をも頼もしきと思ふべき也、いかに心やすき人と云とも、生得臆病ならん人に、戰の事尋まじきなり、大事なればとて、さし當るわざをのがれんとすまじき也、やすければとてすまじからん、戰をすゝむまじきなり、凡合戰はやすかりぬべき時は、他人にさきをかけさせ、大事ならん時は、たとひ百度といふとも、我一人の所作と心得べき也、いつはれるふるまひは、ことさら合戰にわろきなり、かやうの事、をろかなる身におもひ知事のみ侍れば、せめての親の慈悲のあまりに、我よりもなををろかならん、子孫のために書付侍り、涯分身をまもり修て、萬事に遠慮あるべきなり、

新字:あざむく事有まじき也、戦ふヿには、おほけなくとも心を高く持て、我にまされる剛の者あらじと思ひつめて、人の力にもなり、人をも頼もしきと思ふべき也、いかに心やすき人と云とも、生得臆病ならん人に、戦の事尋まじきなり、大事なればとて、さし当るわざをのがれんとすまじき也、やすければとてすまじからん、戦をすゝむまじきなり、凡合戦はやすかりぬべき時は、他人にさきをかけさせ、大事ならん時は、たとひ百度といふとも、我一人の所作と心得べき也、いつはれるふるまひは、ことさら合戦にわろきなり、かやうの事、をろかなる身におもひ知事のみ侍れば、せめての親の慈悲のあまりに、我よりもなををろかならん、子孫のために書付侍り、涯分身をまもり修て、万事に遠慮あるべきなり、

書き下し

あざむく事有まじき也、戰ふヿには、おほけなくとも心を高く持て、我にまされる剛の者あらじと思ひつめて、人の力にもなり、人をも頼もしきと思ふべき也、いかに心やすき人と云とも、生得臆病ならん人に、戰の事尋まじきなり、大事なればとて、さし當るわざをのがれんとすまじき也、やすければとてすまじからん、戰をすゝむまじきなり、凡合戰はやすかりぬべき時は、他人にさきをかけさせ、大事ならん時は、たとひ百度といふとも、我一人の所作と心得べき也、いつはれるふるまひは、ことさら合戰にわろきなり、かやうの事、をろかなる身におもひ知事のみ侍れば、せめての親の慈悲のあまりに、我よりもなををろかならん、子孫のために書付侍り、涯分身をまもり修て、萬事に遠慮あるべきなり、

現代語訳

人を欺くことがあってはなりません。戦いにおいては、身のほど知らずと言われようと心を高く持ち、自分にまさる剛の者はいないと思い詰めて、人の力にもなり、人をも頼もしいと思うべきです。どれほど気安い人でも、生まれつき臆病な人に、戦のことを尋ねてはなりません。大事だからといって、目の前の務めを逃れようとしてはなりません。簡単だからといって、すべきでない戦を勧めてはなりません。おおよそ合戦は、たやすそうな時は他人に先駆けさせ、大事な時は、たとえ百度でも自分一人の仕事と心得るべきです。偽りの振る舞いは、とりわけ合戦では悪いものです。こうしたことは、愚かな身でも思い知ることばかりなので、せめて親の慈悲の余りに、私よりもさらに愚かであろう子孫のために書き付けました。できる限り身を守り修め、万事に遠慮深くあるべきです。

解説

結びの一条で、義将は戦の心得と、この家訓を書き残した理由を語ります。心は高く持ち、人を欺かず、助け合うこと。臆病な人に戦のことを尋ねない人選の目。簡単な時は人に先を譲り、大事な時は自分一人の仕事と引き受ける責任の取り方。そして、自分より愚かかもしれない子孫のために書き付けたという謙虚さが印象的です。現代の管理職も、易しい局面では部下に経験を積ませ、重大な局面では自ら責任を負う姿勢が部下の信頼を生みます。

この章句が説くこと

戦の心得責任臆病先駆け家訓子孫

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