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武士訓 / 卷四・第6段

右にいへるごとく。他のいふことをば。よく〱きゝあはすべし。偏聽生姦といふ語のごとし。俗人はをのが心にあはねば。よきをもあしきといひ。あしきをもよしといひ。我意にまかせて告る故。大なる違おほし。人を一ぺんにあしくおもふものは。その人のよきこと見えらぬなり。曾子語に。好我者知其美矣。惡我者知其惡矣とあるがごとし。

新字:右にいへるごとく。他のいふことをば。よく〱きゝあはすべし。偏聴生姦といふ語のごとし。俗人はをのが心にあはねば。よきをもあしきといひ。あしきをもよしといひ。我意にまかせて告る故。大なる違おほし。人を一ぺんにあしくおもふものは。その人のよきこと見えらぬなり。曽子語に。好我者知其美矣。悪我者知其悪矣とあるがごとし。

書き下し

右にいへるごとく。他のいふことをば。よく〱きゝあはすべし。偏聽生姦といふ語のごとし。俗人はをのが心にあはねば。よきをもあしきといひ。あしきをもよしといひ。我意にまかせて告る故。大なる違おほし。人を一ぺんにあしくおもふものは。その人のよきこと見えらぬなり。曾子語に。好我者知其美矣。惡我者知其惡矣とあるがごとし。

現代語訳

右に述べたように、他人の言うことは、よくよく聞き合わせなさい。「偏って聴けば奸を生ず」という語のとおりです。俗人は、自分の心に合わなければ、よいことも悪いと言い、悪いこともよいと言い、我意にまかせて告げるので、大きな違いが多くなります。人を一度に悪いと思う者は、その人のよいところが見えません。曾子の語に「我を好む者はその美を知り、我を悪む者はその悪を知る」とあるとおりです。

解説

この段は、前段を受け、他人の言うことは複数から聞き合わせよ、と説きます。偏って聴けば奸を生むという語を引き、片方だけの話に頼る危うさを示します。俗人は自分の心に合うかどうかで善悪を言うので、告げる話に大きな違いが出ると指摘します。人を一度に悪いと思うと、その人のよい点が見えなくなるという一節も重要です。曾子の語は、好む者は美を、憎む者は悪を知るという、評価が立場で偏ることを示しています。人事評価や、トラブルの聞き取りで、一人の言い分だけに頼らず、好意的な見方と批判的な見方の両方に耳を傾けることが、公平な判断を支えます。

この章句が説くこと

聞き合わせ偏聴曽子公平評価武士訓

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