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武士道 / 第九章 忠節・英国人の王室への忠節

是に於て吾人は、彼の平民的なること英國人の如くにして、尙ほ且つ、近時プトミー氏の云へるが如く、『祖先たる獨逸種族が、其曾長と其子孫とに對して盡せる忠厚の念は、多少の漸變を經て今日に至り、英國人の其君主の血統裔種に對し、深厚なる忠節となれることは、彼民の王室に表する多大の愛敬の能く之を證するものあり』と云へるを記憶せん。スペンサー氏は預言して、政治上の從屬は、變移して良心の〓示に忠なるに至るべしと。

新字:是に於て吾人は、彼の平民的なること英国人の如くにして、尚ほ且つ、近時プトミー氏の云へるが如く、『祖先たる独逸種族が、其曽長と其子孫とに対して尽せる忠厚の念は、多少の漸変を経て今日に至り、英国人の其君主の血統裔種に対し、深厚なる忠節となれることは、彼民の王室に表する多大の愛敬の能く之を証するものあり』と云へるを記憶せん。スペンサー氏は預言して、政治上の従属は、変移して良心の〓示に忠なるに至るべしと。

書き下し

是に於て吾人は、彼の平民的なること英国人の如くにして、なほ且つ、近時ブトミー氏の云へるが如く、『祖先たる独逸種族が、其酋長と其子孫とに対して尽せる忠厚の念は、多少の漸変を経て今日に至り、英国人の其君主の血統裔種に対し、深厚なる忠節となれることは、彼民の王室に表する多大の愛敬の能く之を証するものあり』と云へるを記憶せん。スペンサー氏は預言して、政治上の従属は、変移して良心の(指)示に忠なるに至るべしと。

現代語訳

そこでわれわれは、英国人のように平民的な国民でありながら、なお、近ごろブトミー氏(フランスの政治学者)が言ったように、「祖先であるゲルマン種族がその首長とその子孫に対して尽くした忠誠の念は、多少しだいに変化しながら今日に至り、英国人がその君主の血統に対して抱く深い忠節となっている。そのことは、彼らが王室に示す大きな敬愛がよく証明している」と言ったことを覚えておこう。スペンサー氏は予言して、政治上の従属は、やがて移り変わって、良心の(指)図に忠実であることに至るだろうと言った。

解説

忠節は封建的で時代遅れだという西洋の批判に対して、新渡戸は英国人自身の忠誠心を示して答えます。フランスの政治学者ブトミーは英国の国民性を論じた人で、平民的な英国人でさえ、ゲルマンの祖先が首長に尽くした忠誠を受け継ぎ、王室を深く敬愛していると述べました。忠節は日本だけの遅れた習慣ではなく、民主的とされる英国にも生きていると言いたいのです。一方で新渡戸は、スペンサーが、政治上の従属はやがて良心への忠実に変わると予言したことにも触れます。忠誠の向かう先が人から良心へ移るという見通しは、次の章以降、武士道の将来を論じる伏線にもなっています。あなたの忠誠は、特定の人に向いていますか、それとも自分の良心に向いていますか。

この章句が説くこと

忠節良心英国王室スペンサー

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