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文武訓 / 文訓下之末

一古の學を好みし人、財祿の養なく、貧賤にして、みづから田をつくり、薪をとりて身を養ひ、艱苦して書をよむ。或は貧しくして燈なく、雪に映じ螢をあつめて書を讀み、又壁をうがちて、隣のともし火を用ひて、書を讀みし人あり。或は貧家に讀むべき書なくして、書ある家にやとはれ、ちからのはたらきして、其かはりに書を借りてよみし人あり。かゝる艱苦をなめて、書をよみし人おほかりき。其志たふとぶべく、其艱苦あはれむべし。かくの如く苦みてつとめし人は、其功業を成して道を知り、世に用ひられたり。

新字:一古の学を好みし人、財禄の養なく、貧賤にして、みづから田をつくり、薪をとりて身を養ひ、艱苦して書をよむ。或は貧しくして灯なく、雪に映じ蛍をあつめて書を読み、又壁をうがちて、隣のともし火を用ひて、書を読みし人あり。或は貧家に読むべき書なくして、書ある家にやとはれ、ちからのはたらきして、其かはりに書を借りてよみし人あり。かゝる艱苦をなめて、書をよみし人おほかりき。其志たふとぶべく、其艱苦あはれむべし。かくの如く苦みてつとめし人は、其功業を成して道を知り、世に用ひられたり。

書き下し

一古の学を好みし人、財禄の養なく、貧賤にして、みづから田をつくり、薪をとりて身を養ひ、艱苦して書をよむ。或は貧しくして灯なく、雪に映じ蛍をあつめて書を読み、又壁をうがちて、隣のともし火を用ひて、書を読みし人あり。或は貧家に読むべき書なくして、書ある家にやとはれ、ちからのはたらきして、其かはりに書を借りてよみし人あり。かかる艱苦をなめて、書をよみし人おほかりき。其志たふとぶべく、其艱苦あはれむべし。かくの如く苦みてつとめし人は、其功業を成して道を知り、世に用ひられたり。

現代語訳

昔、学問を好んだ人は、財産や俸禄による暮らしの支えがなく、貧しい中で自ら田を耕し、薪を取って身を養い、苦労して書を読みました。あるいは貧しくて灯火がなく、雪明かりに照らし、蛍を集めて書を読み、また壁に穴をあけて隣家の灯火を借りて書を読んだ人もいます。あるいは貧しい家で読む書がなく、書のある家に雇われて力仕事をし、その代わりに書を借りて読んだ人もいます。このような苦労をなめて書を読んだ人が多かったのです。その志は尊ぶべく、その苦労はあわれむべきです。このように苦しんで努めた人は、功業を成し遂げて道を知り、世に用いられました。

解説

雪明かりや蛍の光で読んだ話(孫康・車胤の「蛍雪の功」)、壁に穴をあけて隣の灯を借りた話(匡衡)、雇われて書を借りた話など、中国の苦学の故事を並べた一節です。益軒は、恵まれない条件でも学び続けた人が、やがて道を知り世に用いられたことを強調します。今は本もネットも手軽に使える時代ですが、だからこそ学ぶ意志があるかどうかが問われます。環境のせいにせず、手の届く範囲で学ぶ工夫をする姿勢は、社会人の学び直しにもそのまま役立ちます。

この章句が説くこと

苦学読書志蛍雪学問

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