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文武訓 / 文訓下

かざり多き文は、其作者の心に實なき事、思ひやられ侍る。益なきことを作りて、我が心の僞飾を書きあらはすは愚なり。われ人のため、益なくして害あり。人のよきをあやまりて惡しゝとし、惡しきことをよしとして、いつはりを記すこと、天道のせめのがれがたし。おそるべし。およそかゝることにつきても、天道にそむきぬれば、當時のせめ目に見えねども、後の禍のがれがたし。かへすがへす天道をば恐るべし。又めづらしくあやしき文字を用ふるは、必ず淺才のわざなり。

新字:かざり多き文は、其作者の心に実なき事、思ひやられ侍る。益なきことを作りて、我が心の偽飾を書きあらはすは愚なり。われ人のため、益なくして害あり。人のよきをあやまりて悪しゝとし、悪しきことをよしとして、いつはりを記すこと、天道のせめのがれがたし。おそるべし。およそかゝることにつきても、天道にそむきぬれば、当時のせめ目に見えねども、後の禍のがれがたし。かへすがへす天道をば恐るべし。又めづらしくあやしき文字を用ふるは、必ず浅才のわざなり。

書き下し

かざり多き文は、其作者の心に実なき事、思ひやられ侍る。益なきことを作りて、我が心の偽飾を書きあらはすは愚なり。われ人のため、益なくして害あり。人のよきをあやまりて悪ししとし、悪しきことをよしとして、いつはりを記すこと、天道のせめのがれがたし。おそるべし。およそかかることにつきても、天道にそむきぬれば、当時のせめ目に見えねども、後の禍のがれがたし。かへすがへす天道をば恐るべし。又めづらしくあやしき文字を用ふるは、必ず浅才のわざなり。

現代語訳

飾りの多い文は、その作者の心に誠のないことが思いやられます。益のないことを作って、自分の心の偽りや飾りを書きあらわすのは愚かです。自分にも人にも益がなくて害があります。人のよいところを誤って悪いとし、悪いことをよいとして、偽りを記すことは、天道の責めを逃れがたいものです。恐ろしいことです。およそこのようなことでも、天道に背けば、その時の責めは目に見えなくても、後の禍は逃れがたいものです。くれぐれも天道を恐れなさい。また珍しく怪しい文字を用いるのは、必ず浅い才のわざです。

解説

飾りの多い文には作者の不誠実が表れ、人の善を悪とし悪を善として偽りを記せば、その場では咎められなくても天道の責めと後の禍を逃れられないと戒めます。記録や評価を書く者の倫理を天道という言葉で重く説いています。珍しい文字を使うのは浅い才のしるしだという結びも手厳しいものです。今でも、人事評価や推薦状、報道などで事実を曲げて書くことは、いずれ信用の失墜という形で返ってきます。書く者の誠実さが問われる一節です。

この章句が説くこと

誠実天道記録偽り文章

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