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文武訓 / 文訓下

一往事を記すの文は、つたなくとも誠實にして虛飾なかるべし。是實錄にして後の證となれり。世寶とすべし。もし誠實ならずして、かざりを專とし詞をたくみにせば、其記す所、僞あるべくして信じ難し、實錄とすべからず。もし如斯ならば、文章たくみなりとも、事をしるすに實なくして、かへつて人をまよはし、益なくして害あるべし。司馬遷、班固、韓退之、歐陽永叔などは、古來文章の大家なるが、其文質實にして奇巧ならず、飾なし。奇巧をこのむは鄙拙なり。

新字:一往事を記すの文は、つたなくとも誠実にして虚飾なかるべし。是実録にして後の証となれり。世宝とすべし。もし誠実ならずして、かざりを専とし詞をたくみにせば、其記す所、偽あるべくして信じ難し、実録とすべからず。もし如斯ならば、文章たくみなりとも、事をしるすに実なくして、かへつて人をまよはし、益なくして害あるべし。司馬遷、班固、韓退之、欧陽永叔などは、古来文章の大家なるが、其文質実にして奇巧ならず、飾なし。奇巧をこのむは鄙拙なり。

書き下し

一往事を記すの文は、つたなくとも誠実にして虚飾なかるべし。是実録にして後の証となれり。世宝とすべし。もし誠実ならずして、かざりを専とし詞をたくみにせば、其記す所、偽あるべくして信じ難し、実録とすべからず。もし如斯ならば、文章たくみなりとも、事をしるすに実なくして、かへつて人をまよはし、益なくして害あるべし。司馬遷、班固、韓退之、欧陽永叔などは、古来文章の大家なるが、其文質実にして奇巧ならず、飾なし。奇巧をこのむは鄙拙なり。

現代語訳

過去の事を記す文は、拙くても誠実で、虚飾があってはいけません。それが実録であって、後の証拠となるのです。世の宝とすべきです。もし誠実でなく、飾りを専らにし、言葉を巧みにすれば、その記すところは偽りがありそうで信じがたく、実録とはできません。もしそうであれば、文章が巧みであっても、事を記すのに実がなく、かえって人を迷わせ、益がなく害があるでしょう。司馬遷・班固・韓愈・欧陽脩などは古来の文章の大家ですが、その文は質実で奇巧ではなく、飾りがありません。奇巧を好むのは卑しく拙いことです。

解説

出来事を記録する文は拙くても誠実で虚飾のないことが第一で、それこそが後世の証拠となる実録だと説きます。手本として挙げる司馬遷(史記)・班固(漢書)・韓愈・欧陽脩は、いずれも質実な文で知られる史家・文章家です。益軒は『黒田家譜』や『筑前国続風土記』など藩の歴史や地誌の編纂にも携わり、記録の誠実さを身をもって知っていました。今の議事録や報告書でも、体裁より事実の正確さが価値を決めます。飾った記録は後で必ず人を迷わせます。

この章句が説くこと

記録誠実文章史記実録

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