文武訓 / 文訓上之末
一和歌は日本の風俗なれど、天性歌よむにつたなき人あり。歌學ありてもよみがたし。いはんや和歌の道知らずしてよめばひがごと多く、必ず人にわらはる。勞苦して恥を求むるは、益なくして損あり。歌學して後、人の敎をうけて歌をよむべし。
新字:一和歌は日本の風俗なれど、天性歌よむにつたなき人あり。歌学ありてもよみがたし。いはんや和歌の道知らずしてよめばひがごと多く、必ず人にわらはる。労苦して恥を求むるは、益なくして損あり。歌学して後、人の教をうけて歌をよむべし。
書き下し
一和歌は日本の風俗なれど、天性歌よむにつたなき人あり。歌学ありてもよみがたし。いはんや和歌の道知らずしてよめばひがごと多く、必ず人にわらはる。労苦して恥を求むるは、益なくして損あり。歌学して後、人の教をうけて歌をよむべし。
現代語訳
和歌は日本の風俗ですが、生まれつき歌を詠むのが拙い人がいます。歌学があっても詠みがたいのです。まして和歌の道を知らずに詠めば、誤りが多く、必ず人に笑われます。苦労して恥を求めるのは、益がなくて損があります。歌学を学んで後、人の教えを受けて歌を詠みなさい。
解説
和歌は母語の文化でも、天性の向き不向きがあり、歌学があっても詠みがたいのだから、道を知らずに詠めば笑われるだけで損だと説き、まず歌学を学び、人の教えを受けてから詠めと結びます。文訓上之末は和歌と詩についての慎重な態度で貫かれています。益軒は学ぶことと教えを受けることの順序を重んじました。今の習い事や仕事でも、自己流で始めるより基礎を学び、指導を受けてから実践するほうが、遠回りに見えて確実に上達します。
この章句が説くこと
和歌学び師教え歌学
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