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文武訓 / 文訓上

次に書狀を書くに禮法あり。年やうやく長ぜば是をならふべし。是亦日用の要事なり。手跡よくしても、書禮を知らざれば法にあはず、ひがごと多し。音樂は、古よりもはら朝廷に傳りて、衆人のまなぶ事なりがたし。俗樂も、淫聲に非ずんば、忠孝義理の道、其のふる事など、風雅なる詞を以てつくりて歌章として、小兒の時より習はしめば、敎となり義理をたすくべし。今の俗樂の章歌は敎とならず。又、其ほど拍子のいそがはしきも、心をさわがしくして害あり。弓馬はいにしへよりわが國のくはしき敎あり。幼より學ぶべし。書法は唐やまとの古筆をまなぶべし。能書を學ばざれば書學すゝまず。風體よき書をえらびて習ふべし。風體あしければ書法にかなはず。

新字:次に書状を書くに礼法あり。年やうやく長ぜば是をならふべし。是亦日用の要事なり。手跡よくしても、書礼を知らざれば法にあはず、ひがごと多し。音楽は、古よりもはら朝廷に伝りて、衆人のまなぶ事なりがたし。俗楽も、淫声に非ずんば、忠孝義理の道、其のふる事など、風雅なる詞を以てつくりて歌章として、小児の時より習はしめば、教となり義理をたすくべし。今の俗楽の章歌は教とならず。又、其ほど拍子のいそがはしきも、心をさわがしくして害あり。弓馬はいにしへよりわが国のくはしき教あり。幼より学ぶべし。書法は唐やまとの古筆をまなぶべし。能書を学ばざれば書学すゝまず。風体よき書をえらびて習ふべし。風体あしければ書法にかなはず。

書き下し

次に書状を書くに礼法あり。年やうやく長ぜば是をならふべし。是亦日用の要事なり。手跡よくしても、書礼を知らざれば法にあはず、ひがごと多し。音楽は、古よりもはら朝廷に伝りて、衆人のまなぶ事なりがたし。俗楽も、淫声に非ずんば、忠孝義理の道、其のふる事など、風雅なる詞を以てつくりて歌章として、小児の時より習はしめば、教となり義理をたすくべし。今の俗楽の章歌は教とならず。又、其ほど拍子のいそがはしきも、心をさわがしくして害あり。弓馬はいにしへよりわが国のくはしき教あり。幼より学ぶべし。書法は唐やまとの古筆をまなぶべし。能書を学ばざれば書学すすまず。風体よき書をえらびて習ふべし。風体あしければ書法にかなはず。

現代語訳

次に、書状を書くのにも礼法があります。年がだんだん長じたらこれを習うべきです。これもまた日々に必要な大切なことです。字がうまくても、書状の礼を知らなければ法にかなわず、誤りが多くなります。音楽は、昔からもっぱら朝廷に伝わってきたもので、一般の人が学ぶことは難しいものです。俗楽であっても、淫らな調べでなければ、忠孝や義理の道、昔の事柄などを風雅な言葉で作って歌詞とし、子どもの時から習わせれば、教えとなり義理を助けるでしょう。今の俗楽の歌詞は教えになりません。またその拍子のせわしいのも、心を騒がせて害があります。弓馬には、昔からわが国に詳しい教えがあります。幼いうちから学ぶべきです。書法は中国と日本の古い名筆を学ぶべきです。能書を学ばなければ書の学は進みません。風体のよい書を選んで習うべきです。風体が悪ければ書法にかないません。

解説

六芸のうち書状の礼、音楽、弓馬、書道について、それぞれの学び方を述べています。とくに音楽では、忠孝や義理を風雅な言葉で歌にして子どもに習わせれば教えになると言い、せわしない拍子の俗謡は心を騒がせると退けます。益軒は子どもの教育法を体系化した人で、耳から入るものが心を形づくると考えていました。今でいえば、子どもが日々聞く音楽や動画の質に気を配ることや、手紙やメールの礼儀を早めに身につけさせることに通じます。

この章句が説くこと

礼音楽書道子育て教育

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