武家家訓集 / 北条早雲廿一箇条第3条
一ゆふべには、五ッ以前に寢しづまるべし、夜盜は必子丑の刻に忍び入者也、宵に無用の長雜談、子丑にねいり家財をとられ損亡す、外聞しかるべからず、宵にいたづらに焼すつる薪灯をとりをき、寅の刻に起行水拜みし、身の形儀をとゝのへ、其日の用所妻子家來の者共に申付、扠六ッ以前に出仕申べし、古語には子にふし、寅に起よと候得ども、それは人により候、すべて寅に起て得分有べし、辰巳の刻迄臥ては、主君の出仕奉公もならず、又自分の用所をもかく、何の謂かあらむ、日果むなしかるべし、
新字:一ゆふべには、五ッ以前に寝しづまるべし、夜盗は必子丑の刻に忍び入者也、宵に無用の長雑談、子丑にねいり家財をとられ損亡す、外聞しかるべからず、宵にいたづらに焼すつる薪灯をとりをき、寅の刻に起行水拝みし、身の形儀をとゝのへ、其日の用所妻子家来の者共に申付、扠六ッ以前に出仕申べし、古語には子にふし、寅に起よと候得ども、それは人により候、すべて寅に起て得分有べし、辰巳の刻迄臥ては、主君の出仕奉公もならず、又自分の用所をもかく、何の謂かあらむ、日果むなしかるべし、
書き下し
一ゆふべには、五ッ以前に寢しづまるべし、夜盜は必子丑の刻に忍び入者也、宵に無用の長雜談、子丑にねいり家財をとられ損亡す、外聞しかるべからず、宵にいたづらに焼すつる薪灯をとりをき、寅の刻に起行水拜みし、身の形儀をとゝのへ、其日の用所妻子家來の者共に申付、扠六ッ以前に出仕申べし、古語には子にふし、寅に起よと候得ども、それは人により候、すべて寅に起て得分有べし、辰巳の刻迄臥ては、主君の出仕奉公もならず、又自分の用所をもかく、何の謂かあらむ、日果むなしかるべし、
現代語訳
夕方は、午後八時前(五つ以前)にはおとなしく寝静まりなさい。夜盗は必ず子丑の刻(午前零時〜三時ごろ)に忍び込むものです。宵に意味のない長話をしていて、子丑の刻に寝入ってしまい、家財を盗まれて損をするのは、外聞もよくありません。宵のうちにむだに燃やしてしまう薪や灯火を取っておき、寅の刻(午前四時ごろ)に起きて水を浴び、礼拝をして身なりを整え、その日の用事を妻子や家来たちに言い付けて、そのうえで六つ(午前六時ごろ)より前に出仕しなさい。古い言葉には「子に伏し、寅に起きよ」とありますが、それは人によります。ともかく寅に起きれば得るものがあります。辰巳の刻(午前八〜十時ごろ)まで寝ていては、主君への出仕奉公もかなわず、自分の用事も欠き、何の道理があるでしょうか。一日がむなしく過ぎるでしょう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『武家家訓集』北条早雲廿一箇条「第2条」一朝はいかにもはやく起べし、遲く起ぬれば、召仕ふ者まで由斷しつかはれず、公私の用をかくなり、はたしては必主君にみかぎられ申べしと、ふかくつゝしむべし、
-
『武家家訓集』北条早雲廿一箇条「第19条」一ゆふべは六ッ時に門をはたとたて、人の出入によりあけさすべし、さ樣になくしては、由斷に有之、かならず惡事出來すべき也、
-
『武家家訓集』北条早雲廿一箇条「第4条」一手水をつかはぬさきに、厠より廐庭門外迄見めぐり、先掃除すべき所を、にあひの者にいひ付、手水をはやくつかふべし、水はありものなればとて、たゞうがひし捨べからず、家のうちなればとて、たかく聲ばらひする事、人にはゞからぬ體にて、聞にくし、ひそかにつかふべし、天に跼地に蹐すといふ事あり、
-
『武家家訓集』北条早雲廿一箇条「第7条」一出仕の時は申に及ず、或は少き煩所用在之、今日は宿所にあるべしとおもふとも、髪をはやくゆふべし、はふけたる體にて人々にみゆる事、虛外又つたなきこゝろ也、我身に由斷がちなれば、召仕ふ者までも其振舞程に嗜むべし、同たふの人の尋來るにも、とゝつきまはりて見ぐるしき事也、
-
『家道訓』巻之一・総論上一毎日つとに起きて、手と面をあらひ、まづ父母の気色をうかがひ、飲食のこのみを問ひてととのへすすめ、其もとめあるを聞きて、つとめ行ひて、父母の心にかなふべし。子弟に、其の日の務むべき課程をさづけをしへ、奴婢に、其の日の所作を云ひつけ、おこたりなからしめ、外事あらば使を命じ、人の附託あらば滞なく整ふべし。朝は早くおき、門戸を早く開かせ、家内の塵をはらひ、門の内外庭中を掃除して、皆いさぎよくすべし。朝おそく起くるは家のおとろへとなる。いましむべし。古人、家の盛衰は、朝おくることの遅速を以て試むべしと云ひし、むべなるかな。
-
『大和俗訓』巻之七・躬行下一古人は、人の朝早く起くると、おそく起くるとを以て、家の興廃を知るといへり。朝早く起くるは、家の栄ゆるしるしなり。遅く起くるは、家の衰ふる基なり。朝つとにおきて事を勉むるを以て、身の習はしとし、家のつとめの則とし、見習はしむべし。凡の人を見るに、朝居しては学ぶことならず。家業怠りて、富めるもの稀なり。朝居するは怠のはじめ、貧窮のもとゐなり。よく事をつとむる者は、一日を以て十日とす。つとめて怠なく、鋭なれば捗ゆく故なり。おこたる者は、十日を以て一日とす。日数多く経るといへど捗ゆかず。凡善をつとめて怠らざるを良士とす。必家をおこす。家業をつとめて怠らざるを良民とす。必富む。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る