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武事提要 / 武敎之問答・武は続けやすく、備えは平時に整える

答云、此方の目當は易く行れ長久ならしむるを以て目當とする也、爰を以いたしがたき事、あやうき事、皆流儀に嫌之不用事なり、世上の人の行處を行ひ、萬人の可爲ことをなすなり、聊以異形異事を不用不取也、弓矢の事は治平の上猶以勤來を武の守り武の戒にして、家の祈禱ともなるべきは是なり、武家に生れ武將と號し武士と訓ずる人、常に此處を相心得て怠べからざるは武の事業なり、古來より炎天に水道をさらへ、無事に武具を求むるは良將の業なりと有之也、是夏の炎天には雨水洪水は希なり、此時により水の可行道をこしらへをく時は、秋に至り數日の雨水に滯事なきなり、世上靜謐にして違背するもの一夫もなし、其時に人數のしらべ、備の分配組、弓鐵砲鑓長刀其外品々、武器馬具のしらべ有之ときは變成事、只今出來するとも手を取事無之、總世治必捨武、榮華に走ば武を忘、古人の戒る所也、八問云、武の道と云は、何方をさして可言之や、又不可離所ありや、答云、武の道と云は、邪路橫道に行ものを改正して、直に行しめ、次第を亂して行ものを順ならしむるの事、皆武道なり、是を變を治ると云なれば、武たる人は大小上下共にこれを役職と心得て、變のあるべきことをはかり、手をつかざる如くするを武の道の正しきとは云なり、古詩にも、

新字:答云、此方の目当は易く行れ長久ならしむるを以て目当とする也、爰を以いたしがたき事、あやうき事、皆流儀に嫌之不用事なり、世上の人の行処を行ひ、万人の可為ことをなすなり、聊以異形異事を不用不取也、弓矢の事は治平の上猶以勤来を武の守り武の戒にして、家の祈祷ともなるべきは是なり、武家に生れ武将と号し武士と訓ずる人、常に此処を相心得て怠べからざるは武の事業なり、古来より炎天に水道をさらへ、無事に武具を求むるは良将の業なりと有之也、是夏の炎天には雨水洪水は希なり、此時により水の可行道をこしらへをく時は、秋に至り数日の雨水に滞事なきなり、世上静謐にして違背するもの一夫もなし、其時に人数のしらべ、備の分配組、弓鉄砲鑓長刀其外品々、武器馬具のしらべ有之ときは変成事、只今出来するとも手を取事無之、総世治必捨武、栄華に走ば武を忘、古人の戒る所也、八問云、武の道と云は、何方をさして可言之や、又不可離所ありや、答云、武の道と云は、邪路横道に行ものを改正して、直に行しめ、次第を乱して行ものを順ならしむるの事、皆武道なり、是を変を治ると云なれば、武たる人は大小上下共にこれを役職と心得て、変のあるべきことをはかり、手をつかざる如くするを武の道の正しきとは云なり、古詩にも、

書き下し

答云、此方の目當は易く行れ長久ならしむるを以て目當とする也、爰を以いたしがたき事、あやうき事、皆流儀に嫌之不用事なり、世上の人の行處を行ひ、萬人の可爲ことをなすなり、聊以異形異事を不用不取也、弓矢の事は治平の上猶以勤來を武の守り武の戒にして、家の祈禱ともなるべきは是なり、武家に生れ武將と號し武士と訓ずる人、常に此處を相心得て怠べからざるは武の事業なり、古來より炎天に水道をさらへ、無事に武具を求むるは良將の業なりと有之也、是夏の炎天には雨水洪水は希なり、此時により水の可行道をこしらへをく時は、秋に至り數日の雨水に滯事なきなり、世上靜謐にして違背するもの一夫もなし、其時に人數のしらべ、備の分配組、弓鐵砲鑓長刀其外品々、武器馬具のしらべ有之ときは變成事、只今出來するとも手を取事無之、總世治必捨武、榮華に走ば武を忘、古人の戒る所也、八問云、武の道と云は、何方をさして可言之や、又不可離所ありや、答云、武の道と云は、邪路橫道に行ものを改正して、直に行しめ、次第を亂して行ものを順ならしむるの事、皆武道なり、是を變を治ると云なれば、武たる人は大小上下共にこれを役職と心得て、變のあるべきことをはかり、手をつかざる如くするを武の道の正しきとは云なり、古詩にも、

現代語訳

答えて言います。この流派の目当ては、行いやすく長く続けられることを目当てとします。そこで、行いがたいこと、危ういことは、すべて流儀として嫌い、用いません。世の人が行うところを行い、万人がなすべきことをなします。いささかも異形・異事は用いず、取りません。弓矢のことは、太平の世にいっそう勤めてきたことが武の守り、武の戒めとなり、家の祈禱ともなるのです。武家に生まれ、武将と号し、武士と訓じられる人が、常にこのところを心得て怠らないのが武の事業です。昔から、炎天に水路をさらい、事のないときに武具を求めるのは、良将の業であるといわれています。夏の炎天には雨水や洪水はまれです。この時に水の流れる道を作っておけば、秋になって数日の雨が降っても滞ることがありません。世の中が静かで、背く者が一人もいない、その時に、人数の調べ、備えの分配や組、弓・鉄砲・槍・長刀その他さまざまの武器・馬具の調べがあれば、変事が起きても、今すぐにできて手間取ることがありません。総じて世が治まったときは必ず武を捨て、栄華に走れば武を忘れるのは、古人が戒めたところです。八つ目の問い。武の道とはどこをさして言うのですか。また離れてはならない所はありますか。答えて言います。武の道とは、邪路・横道に行く者を改め正して直ぐに行かせ、順序を乱して行う者を順にさせること、これらはみな武道です。これを変を治めるというので、武たる人は大小上下ともにこれを役職と心得て、変のあり得ることをはかり、手を煩わせないようにするのを、武の道の正しいことというのです。古詩にも、

解説

武の目当ては、行いやすく長く続くことにあり、危ういことや奇をてらうことは流儀として退けるとします。炎天のうちに水路をさらい、秋の長雨に備えるたとえは、平時のうちに人数や武器を調べておけば、変事に手間取らないという意味です。武の道は、乱れを正し、変を未然に防ぐ役目とも説かれます。現代の管理職も、トラブルが起きてから動くのではなく、静かな時期に体制や手順の点検を済ませておくことが、危機に強い組織をつくります。好調なときほど備えを忘れない姿勢が大切です。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

『武事提要』山鹿高恒備え平時危機管理武の道

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