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武治提要 / 民政・第12段

貨財は金銀米錢の四を主とす。綿糸楮皮漆油のごときものこれに次り。外國の價舶常に來往して、吾中華の金を物と交易す。彼國の土產其用あるもの、蓋し藥物のみ。其他武門の用たる物、いまだきかず。且玩物淫器に黃金を消化して、壯觀となすもの、一年のついえ其若干たることをしらず。而して外國より金を貢することをきかず。又山海の多く生ずることをも いまだしらず。然らば乃出るもの常に多く、納もの常に寡し。只恐らくは、千歳の後、本朝の主財大に乏に至らんことを。これ庸愚の舌頭を容べからざるの地にして、又杞人の憂なきにあらず。

新字:貨財は金銀米銭の四を主とす。綿糸楮皮漆油のごときものこれに次り。外国の価舶常に来往して、吾中華の金を物と交易す。彼国の土産其用あるもの、蓋し薬物のみ。其他武門の用たる物、いまだきかず。且玩物淫器に黄金を消化して、壮観となすもの、一年のついえ其若干たることをしらず。而して外国より金を貢することをきかず。又山海の多く生ずることをも いまだしらず。然らば乃出るもの常に多く、納もの常に寡し。只恐らくは、千歳の後、本朝の主財大に乏に至らんことを。これ庸愚の舌頭を容べからざるの地にして、又杞人の憂なきにあらず。

書き下し

貨財は金銀米錢の四を主とす。綿糸楮皮漆油のごときものこれに次り。外國の價舶常に來往して、吾中華の金を物と交易す。彼國の土產其用あるもの、蓋し藥物のみ。其他武門の用たる物、いまだきかず。且玩物淫器に黃金を消化して、壯觀となすもの、一年のついえ其若干たることをしらず。而して外國より金を貢することをきかず。又山海の多く生ずることをも いまだしらず。然らば乃出るもの常に多く、納もの常に寡し。只恐らくは、千歳の後、本朝の主財大に乏に至らんことを。これ庸愚の舌頭を容べからざるの地にして、又杞人の憂なきにあらず。

現代語訳

財貨は金・銀・米・銭の四つを主とします。綿糸、楮の皮、漆、油などがこれに次ぎます。外国の商船が常に往来して、わが国の金を物と交換しています。あちらの国の産物で役に立つのは、おそらく薬だけです。そのほか武門の役に立つ物は聞いたことがありません。そのうえ、珍しい玩具や華美な器に黄金をつぎ込んで見栄えとするのは、一年の費えがどれほどになるか分かりません。ところが、外国から金を貢いでくることは聞きません。山海の産物が多く生まれることも、まだ知りません。そうなると、出ていくものは常に多く、納まるものは常に少ない。ただ、千年の後には、本朝の主要な財が大いに乏しくなるのではと恐れます。これは凡庸で愚かな者が口を出せない領域で、また杞人の憂いがないわけでもありません。

解説

この段は、金が国外に流れ続けることへの強い危機感を述べています。外国についての見方は当時の限られた知識によるもので、そのまま現代の貿易観にはなりません。ただ、出るものが常に多く、入るものが常に少ないという収支の見方は、組織にも当てはまります。見栄えのための支出が積み重なると、長い目で財が尽きます。自分の分を超えた口出しではないかと断りながらも、先を憂える語り口には誠実さがあります。数字で現実を見る姿勢は、いまも役に立ちます。

この章句が説くこと

財貨収支貿易杞憂金銀武治提要

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