武治提要 / 武智・第3段
政令を邦域に下し、萬物の規則を立ること、武智より明辨し來らざるときは、有道の士甘心すること少し。有道の士甘心するときは、其終り群輩竟に服す。士服するときは、三民亦從ふ。これ武智を以て武門の風化を敷所以なり。
新字:政令を邦域に下し、万物の規則を立ること、武智より明弁し来らざるときは、有道の士甘心すること少し。有道の士甘心するときは、其終り群輩竟に服す。士服するときは、三民亦従ふ。これ武智を以て武門の風化を敷所以なり。
書き下し
政令を邦域に下し、萬物の規則を立ること、武智より明辨し來らざるときは、有道の士甘心すること少し。有道の士甘心するときは、其終り群輩竟に服す。士服するときは、三民亦從ふ。これ武智を以て武門の風化を敷所以なり。
現代語訳
政令を邦の域に下し、万物の規則を立てるのが、武智からはっきりと弁じて来ないときは、有道の士は心から従うことが少ない。有道の士が心から従えば、最後には群輩もついに服する。士が服すれば、三民もまた従う。これが武智によって武門の風化を敷く所以である。
解説
政令や規則を立てるとき、その根が武智から明らかに弁じられていなければ、有道の士は心から従わないと言います。有道の士が従えば群輩が従い、士が服せば三民も従うという順序です。説得すべき順番は、まず道を知る人、次に周囲、最後に民という連鎖で、ここでの有道の士は、筋を重んじる中核の人材のことでしょう。社内ルールを作るときも、周囲の信頼が厚い中核メンバーが納得するかどうかが、全体への浸透を左右します。まず誰を納得させるかを考えて制度を設計する、という実務的な示唆があります。
この章句が説くこと
有道の士政令規則風化納得武治提要
関連する章句
-
『武治提要』風化・第1段天下國家、其風武德に化するにあらざるときは、武治の極功に至り難し。一旦一夕にしてこれをなすべからず。德を積こと久して、竟に化すべし。凡天下の士、始には令に從て勉强すといへども、熟すること久して常のならはしとなるときは、これを以て安しとなす。令命を待ことあらずして以てこれをなすに至る。風化の實甚以て重し。武將治平の標的此間にあり。
-
『武治提要』知人・第1段武德を天下に敷の道、人を知を第一とす。天下萬機の事物、これを治むること實に難して、其本唯三五人を知て擧用ゆるにあるのみ。然らば乃天下の治甚難して、又甚易にあらずや。武將の心を用ゆること此一件を深重也とす。
-
『武治提要』武德・第3段凡武德の用は、武將勉强して法令を嚴にするにあらざれども、自ら嚴重にして、これを乖戾するものなく、恩賞を常に下すにあらざれども、群士進で其朝につかえんとを求め、怒らずといへども、人々をそれをのゝくと斧鉞のごとき、これ武德の外に行はるゝの象なり。人の畏服すると如此ならんは、いかなる道、いかなる法によるべきぞとならば、其太本武將の身上に武を厚く體認し玉ふにあり。武を好と色を好がごとく、常に用ゆると飮食のごとく、尊信すると鬼神のごとく、重んずると泰山のごとくすると、これ武を以て吾を脩るの先務にして、武德を四海に敷べきの根源なり。凡外に及ものは必內に根ざすと、萬物の情也。故に內にある處の根基小微なるときは、外に發する處亦從て遠大ならず。
-
『武治提要』立規制・第4段規制に無法の法あり、無政の令あり。爰に融通せざるときは、三軍の權を取こと不叶。士卒皆敵を不懼して、吾將を恐れ、すゝむことを知て、退くことを不知、心膽既に定り、耳目既に成て、初て戰を言べし。出軍、奏凱の禮等ゆるかせにすべからず。これ乃戰勝て、强をますの道なり。
-
『武治提要』風化・第2段武將寬仁大度の器あらざるときは、風化をなすべからず。或は功の速ならんことを欲し、或は數ゞ利害に動ときは、大成を得べからず。寬仁なるときは荏苒の功を喜て、捷徑を必とせず。故に自ら疆て怠馳せず。大度なるときは、小利を取小害をさくるに心なし。爰を以て竟に風化をなすべし。所謂小利小害とは一身の勞佚にして事物の大小を云にあらず。たとへ其事物小なりとも、天下國家の安危に屬するものは、大利大害なり。これを詳にすること、武智の明察にあり。武治の風化と云は、治敎久して后、後進は先進の爲に化し、兒孫は父祖の風に浴し、嚴令を待こと無して、天下の士悉く正義を貴て、邪義をにくみ、勇剛を欲して、儒弱をいとる、事物の淸素をよしとして、花奢を嫌ふに至る、これなり。
-
『武治提要』賞罰・第6段撰功の品目、兼日治世に於て詳に正し、其政令を群士に知しむるにあり。勇武をすゝむるのみにあらず、武治風化のかゝる所以なり。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る