晏子春秋 / 雑下・景公以晏子食不足致千金而晏子固不受
晏子方食,景公使使者至,分食食之,使者不飽,晏子亦不飽。使者反,言之公,公曰:「嘻,晏子之家,若是其貧也。寡人不知,是寡人之過也。」使吏致千金與市租,請以奉賓客。晏子辭,三致之,終再拜而辭曰:「嬰之家不貧。以君之賜,澤覆三族,延及交遊,以振百姓,君之賜也厚矣,嬰之家不貧也。嬰聞之,夫厚取之君而施之民,是臣代君君民也,忠臣不為也。厚取之君而不施於民,是為筐篋之藏也,仁人不為也。進取于君,退得罪於士,身死而財遷於它人,是為宰藏也,智者不為也。夫十總之布,一豆之食,足於中免矣。」景公謂晏子曰:「昔吾先君桓公,以書社五百封管仲,不辭而受,子辭之何也?」晏子曰:「嬰聞之,聖人千慮,必有一失;愚人千慮,必有一得。意者管仲之失,而嬰之得者耶?故再拜不敢受命。」
新字:晏子方食,景公使使者至,分食食之,使者不飽,晏子亦不飽。使者反,言之公,公曰:「嘻,晏子之家,若是其貧也。寡人不知,是寡人之過也。」使吏致千金与市租,請以奉賓客。晏子辞,三致之,終再拝而辞曰:「嬰之家不貧。以君之賜,沢覆三族,延及交遊,以振百姓,君之賜也厚矣,嬰之家不貧也。嬰聞之,夫厚取之君而施之民,是臣代君君民也,忠臣不為也。厚取之君而不施於民,是為筐篋之蔵也,仁人不為也。進取于君,退得罪於士,身死而財遷於它人,是為宰蔵也,智者不為也。夫十総之布,一豆之食,足於中免矣。」景公謂晏子曰:「昔吾先君桓公,以書社五百封管仲,不辞而受,子辞之何也?」晏子曰:「嬰聞之,聖人千慮,必有一失;愚人千慮,必有一得。意者管仲之失,而嬰之得者耶?故再拝不敢受命。」
書き下し
晏子方に食す。景公使者をして至らしめ、食を分かちて之に食わしむ。使者飽かず、晏子も亦飽かず。使者反りて、之を公に言う。公曰く、「嘻、晏子の家、是くの若く其れ貧しきか。寡人知らず、是れ寡人の過ちなり」と。吏をして千金と市租とを致さしめ、以て賓客に奉ぜんことを請う。晏子辞す。三たび之を致すも、終に再拝して辞して曰く、「嬰の家貧しからず。君の賜を以て、沢三族を覆い、延びて交遊に及び、以て百姓を振う。君の賜厚し。嬰の家貧しからざるなり。嬰聞く、夫れ厚く之を君に取りて之を民に施せば、是れ臣、君に代わりて民に君たるなり。忠臣は為さず。厚く之を君に取りて民に施さざれば、是れ筐篋の蔵を為すなり。仁人は為さず。進みては君に取り、退きては罪を士に得、身死して財他人に遷るは、是れ宰蔵を為すなり。智者は為さず。夫れ十総の布、一豆の食、中に足れば免れん」と。景公晏子に謂いて曰く、「昔吾が先君桓公、書社五百を以て管仲に封ず。辞せずして受く。子の之を辞するは何ぞや」と。晏子曰く、「嬰聞く、聖人も千慮に必ず一失有り、愚人も千慮に必ず一得有りと。意うに管仲の失にして、嬰の得なる者か。故に再拝して敢えて命を受けず」と。
現代語訳
晏子が食事をしているところへ、景公の使者が来て、食事を分けて使者にも食べさせました。使者は満腹にならず、晏子も満腹になりませんでした。使者は戻ってそのことを公に話しました。公は「ああ、晏子の家はそれほど貧しいのか。私は知らなかった。これは私の過ちだ」と言い、役人に千金と市の税収を届けさせ、賓客のもてなしに使うよう願いました。晏子は辞退しました。三度届けられても、最後に再拝して断り、言いました。「私の家は貧しくありません。君の賜り物で、恩沢は三族に及び、友人たちにも及び、民を救うことができています。君の賜り物は厚いのです。私の家は貧しくありません。私はこう聞いています。君から厚く取って民に施せば、臣が君に代わって民の君主になることです。忠臣はそうしません。君から厚く取っても民に施さなければ、箱の中にしまい込むことです。仁人はそうしません。出仕しては君から取り、退けば士に罪を得て、死んで財が他人の手に渡るのは、他人のために蔵を守る宰のようなものです。智者はそうしません。十総の布と一杯の食事で、中身が足りていれば免れます。」景公は晏子に言いました。「昔、私の先君桓公は書社五百を管仲に封じ、管仲は断らずに受けた。あなたが辞退するのはなぜか。」晏子は答えました。「私はこう聞いています。聖人でも千の思案には必ず一つの失敗があり、愚人でも千の思案には必ず一つの得があると。おそらく管仲の失敗と、私の得ではないでしょうか。だから再拝して、お言いつけを受けないのです。」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・憲問篇子貢曰く、「管仲は仁者に非ざるか。桓公、公子糾を殺すに、死する能わず、又之を相く。」子曰く、「管仲、桓公を相けて、諸侯に霸たり、天下を一匡す。民今に到るまで其の賜を受く。管仲微かりせば、吾其れ髪を被り衽を左にせん。豈に匹夫匹婦の諒を為すが若く、自ら溝瀆に経れて、之を知らるること莫からんや。」
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新語・懷慮故に管仲、桓公を相けて、節を詘して君に事え、心を専らにし意を一にし、身に境外の交わり無く、心に欹斜の慮り無く、其の国を正すこと天下を制するが如く、其の君を尊びて諸侯を屈し、権は海内に行われ、化は諸夏に流れ、道を失う者は誅せられ、義を秉る者は顕らかなり。一事を挙げて天下従い、一政を出だして諸侯靡く。故に聖人は一政を執りて以て百姓を縄し、一槩を持して以て万民を等しくす。同じく一治にして一統を明らかにする所以なり。故に天は一を以て大いに数を成し、人は一を以て□倫を成す。楚の霊王は千里の地に居り、百邑の国を享けながら、仁義を先にせずして道徳を尚び、奇伎を懐き、□□□、陰陽を□し、物怪を合し、乾谿の台を作り、百仞の高きを立て、浮雲に登り、天文を窺わんと欲するも、然れども身は棄疾の手に死す。魯の荘公は中土の地に拠り、聖人の後を承けながら、周公の業を修めず、先人の体を継ぎ、権を尚び威を杖み、万人の力有り、兼人の強を懐くも、子糾を存立する能わず、国は侵され地は奪われ、洙・泗を以て境と為す。
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説苑・辨物斉の桓公北のかた孤竹を征す。未だ卑耳谿中に至らざること十里、闟然(こうぜん)として止まり、瞠然(どうぜん)として視ること頃(しばら)く有り、矢を奉じて未だ敢えて発せず。喟然として歎じて曰わく、「事其れ済(な)らざるか。人の長さ尺なる有り、冠冕大人の物具わる。左袪(きょ)して衣し馬前を走る者あり。」管仲曰わく、「事必ず済らん。此の人は道を知るの神なり。馬前を走る者は導くなり。左に衣を袪する者は、前に水有るなり。」左方より渡り、行くこと十里にして果たして水有り、遼水と曰う。之を表し、左方より渡れば踝(くるぶし)に至り、右方より渡れば膝に至る。已に渡りて、事果たして済る。桓公馬前に管仲を拝して曰わく、「仲父の聖此くの如きに至る、寡人罪を得ること久し。」管仲曰わく、「夷吾之を聞く、聖人は先に無形を知る、今已に形有りて乃ち之を知る、是れ夷吾教えを承くるに善きなり、聖に非ざるなり。」
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論語・八佾篇子曰く、『管仲の器、小なる哉!』或曰く、『管仲は倹なりや。』曰く、『管氏に三帰有り。』曰く、『然らば礼を知るや。』曰く、『邦君、塞門を樹つ、管氏も亦塞門を樹つ。邦君、二君の好を為すに反坫有り、管氏も亦反坫有り。管仲、その器小なる哉!』
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『韓非子』難一第三十六将に天下を治めんとするに、庸主の易しとする所を釈てて、堯・舜の難しとする所を道ふは、未だ与に政を為す可からざるなり」と。管仲病有り、桓公往きて之を問ひて、曰く、「仲父病む、不幸にして大命に卒せば、将に奚を以て寡人に告げんとする」と。管仲曰く、「君の言微かりせば、臣故より将に之を謁せんとす。願はくは君竪刁を去り、易牙を除き、衛の公子開方を遠ざけよ。易牙は君の為に味を主る、君惟だ人肉のみ未だ嘗めず、易牙其の子の首を烝して之を進む。夫れ人情其の子を愛せざる莫し、今其の子を愛せず、安んぞ能く君を愛せん。君妬みて内を好む、竪刁自ら宮して以て内を治む。人情其の身を愛せざる莫し、身すら且つ愛せず、安んぞ能く君を愛せん。開方君に事ふること十五年、斉・衛の間は数日の行を容れず、其の母を弃て、久しく宦して帰らず、其の母すら愛せず、安んぞ能く君を愛せん。臣之を聞く、『矜偽は長からず、蓋虚は久しからず』と。願はくは君此の三子なる者を去れ」と。管仲卒に死す、桓公行はず。桓公死するに及び、蟲戸を出づるも葬られず。或ひと曰く、管仲の桓公に告ぐる所以の者は、度有る者の言に非ざるなり。竪刁・易牙を去る所以の者は、其の身を愛せずして、君の欲に適ふを以てなり。曰く、「其の身を愛せず、安んぞ能く君を愛せん」と。然らば則ち臣に死力を尽くして以て其の主の為にする者有らば、管仲将に用ひざらんとするなり。曰く、「其の死力を愛せず、安んぞ能く君を愛せん」と。是れ君をして忠臣を去らしめんと欲するなり。且つ其の身を愛せざるを以て其の君を愛せざるを度るは、是れ将に管仲の公子糾に死する能はざるを以て其の桓公に死せざるを度らんとするなり、是れ管仲も亦去る所の域に在り。明主の道は然らず、民の欲する所を設けて以て其の功を求む、故に爵禄を為りて以て之を勧む。民の悪む所を設けて以て其の姦を禁ず、故に刑罰を為りて以て之を威す。慶賞信にして刑罰必なり、故に君功を臣に挙げて姦上に用ひられず、竪刁有りと雖も、其れ君を奈何せん。
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『韓非子』外儲説右下第三十五桓公曰く、「善し」と。乃ち宮中に婦人有るを論じて之を嫁せしむ。令を民に下して曰く、「丈夫は二十にして室し、婦人は十五にして嫁す」と。一に曰く、桓公微服して民間に行く、鹿門稷なる者有り、行年七十にして妻無し。桓公管仲に問ひて曰く、「民の老いて妻無き者有るか」と。管仲曰く、「鹿門稷なる者有り、行年七十にして妻無し」と。桓公曰く、「何を以てか之をして妻有らしめん」と。管仲曰く、「臣之を聞く、上に積財有れば、則ち民臣必ず下に匱乏す。宮中に怨女有れば、則ち老いて妻無き者有り」と。桓公曰く、「善し」と。宮中に令す、「女子の未だ嘗て御せざるは出だして之を嫁せしめよ」と。乃ち男子は年二十にして室し、女は年十五にして嫁せしむ、則ち内に怨女無く、外に曠夫無し。延陵卓子蒼龍挑文の乗に乗る、鉤飾前に在り、錯錣後に在り、馬進まんと欲すれば則ち鉤飾之を禁じ、退かんと欲すれば則ち錯錣之を貫く、馬因りて旁らに出づ。造父過りて之が為に泣涕して、曰く、「古の人を治むるも亦然り。
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