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晏子春秋 / 諫上・景公異熒惑守虛而不去晏子諫

景公之時,熒惑守於虛,期年不去。公異之,召晏子而問曰:「吾聞之,人行善者天賞之,行不善者天殃之。熒惑,天罰也,今留虛,其孰當之?」晏子曰:「齊當之。」公不說,曰:「天下大國十二,皆曰諸侯,齊獨何以當之?」晏子曰:「虛,齊野也。且天之下殃,固于富強,為善不用,出政不行,賢人使遠,讒人反昌,百姓疾怨,自為祈祥,錄錄強食,進死何傷?是以列舍無次,變墾有芒,熒惑回逆,孽星在旁。有賢不用,安得不亡?」公曰:「可去乎?」對曰:「可致者可去,不可致者不可去。」公曰,「寡人為之若何?」對曰:「盍去冤聚之獄,使反田矣;散百官之財,施之民矣;振孤寡而敬老人矣。夫若是者,百惡可去,何獨是孽乎?」公曰:「善。」行之三月,而熒惑遷。

新字:景公之時,熒惑守於虚,期年不去。公異之,召晏子而問曰:「吾聞之,人行善者天賞之,行不善者天殃之。熒惑,天罰也,今留虚,其孰当之?」晏子曰:「斉当之。」公不説,曰:「天下大国十二,皆曰諸侯,斉独何以当之?」晏子曰:「虚,斉野也。且天之下殃,固于富強,為善不用,出政不行,賢人使遠,讒人反昌,百姓疾怨,自為祈祥,録録強食,進死何傷?是以列舎無次,変墾有芒,熒惑回逆,孽星在旁。有賢不用,安得不亡?」公曰:「可去乎?」対曰:「可致者可去,不可致者不可去。」公曰,「寡人為之若何?」対曰:「盍去冤聚之獄,使反田矣;散百官之財,施之民矣;振孤寡而敬老人矣。夫若是者,百悪可去,何独是孽乎?」公曰:「善。」行之三月,而熒惑遷。

書き下し

景公の時、熒惑、虚に守りて、期年去らず。公、之を異とし、晏子を召して問いて曰く、「吾之を聞く、人の善を行う者は天之を賞し、善ならざるを行う者は天之に殃す、と。熒惑は天罰なり。今、虚に留まる。其れ孰か之に当たらん」と。晏子曰く、「斉、之に当たる」と。公、説ばず、曰く、「天下の大国十二、皆諸侯と曰う。斉独り何を以て之に当たらん」と。晏子曰く、「虚は斉の野なり。且つ天の殃を下すこと、固より富強に于いてす。善を為せども用いられず、政を出だせども行われず、賢人は遠ざけられ、讒人は反って昌んに、百姓は疾み怨み、自ら祥を祈るを為し、録録として強いて食らい、進みて死すとも何ぞ傷まん。是を以て列舎は次無く、変墾は芒有り、熒惑は回逆し、孽星は旁らに在り。賢有るも用いざれば、安んぞ亡びざるを得ん」と。公曰く、「去る可きか」と。対えて曰く、「致す可き者は去る可く、致す可からざる者は去る可からず」と。公曰く、「寡人、之が為にすること若何」と。対えて曰く、「盍ぞ冤聚の獄を去りて、反りて田せしめざる。百官の財を散じて、之を民に施さざる。孤寡を振い、老人を敬わざる。夫れ是くの若き者は、百悪も去る可し。何ぞ独り是の孽のみならんや」と。公曰く、「善し」と。之を行うこと三月にして、熒惑遷る。

現代語訳

景公の時代、熒惑(火星)が虚の星座にとどまり、一年たっても去りませんでした。公はこれを不思議に思い、晏子を召して尋ねました。「私はこう聞いている。人が善を行えば天はこれを賞し、善でないことを行えば天は災いを下す、と。熒惑は天罰の星だ。いま虚にとどまっている。誰がこれに当たるのか」。晏子は言いました。「斉が当たります」。公は不機嫌になって言いました。「天下に大国は十二あり、みな諸侯と呼ばれる。なぜ斉だけが当たるのか」。晏子は言いました。「虚は斉の分野です。しかも天が災いを下すのは、もとより富み強い国に対してです。善をなしても用いられず、政を出しても行われず、賢人は遠ざけられ、讒言する者がかえって盛んになり、民は病み怨み、自分でさいわいを祈るしかなく、ただ生きるために食べ、先に死んでも惜しくないと思っている。そのため星の位置は乱れ、芒(光の尾)が現れ、熒惑は逆行し、わざわいの星がそばにある。賢者がいるのに用いなければ、どうして滅びずにすみましょう」。公が「取り除けるか」と尋ねると、晏子は答えました。「招いたものなら取り除けます。招いたものでないなら取り除けません」。公は「私はどうすればよいか」と尋ね、晏子は答えました。「冤罪が積もった獄をなくして、囚人を田に戻してはいかがでしょう。役人たちの財を散じて民に施し、孤児や寡婦を救い、老人を敬うのです。そうすれば、あらゆる悪が去るでしょう。この災いだけではありません」。公は「よろしい」と言い、実行して三か月で熒惑は移りました。

解説

熒惑が一年も虚にとどまり、景公は誰が天罰を受けるのかと気にします。晏子は斉が当たると断言し、その理由を、善が用いられず賢者が遠ざけられ讒言が栄えるといった内政の乱れに求めました。天文の現象を口実にして、実際には政治の是非を論じているのが特徴です。後半では、招いたものなら去らせられるという原則に立ち、冤罪の獄を除く、百官の財を散じる、孤寡を救うという具体策を示しました。災いの原因を外に探すより、内の仕組みを直すほうが確実です。不祥事や不振の兆しがあれば、占いや運のせいにせず、人の使い方と処遇の歪みを点検する。そう読むと、現代の組織運営にもそのまま通じます。

この章句が説くこと

天罰冤罪用人責任の所在救済晏子春秋

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