正法眼蔵随聞記 / 巻六
昔し孔子に一人あり、來て歸す、孔子問て云く、汝ぢ何を以てか來て我に歸するや、云く、君子參內の時此を見しに、顯々として威勢あり、故に歸す、ときに孔子弟子に命じて、乘物裝束金銀財物等を取出して此を與へて、汝は我に歸するにあらずと云ふてかへせり、
新字:昔し孔子に一人あり、来て帰す、孔子問て云く、汝ぢ何を以てか来て我に帰するや、云く、君子参内の時此を見しに、顕々として威勢あり、故に帰す、ときに孔子弟子に命じて、乗物装束金銀財物等を取出して此を与へて、汝は我に帰するにあらずと云ふてかへせり、
書き下し
昔し孔子に一人あり、来て帰す、孔子問て云く、汝ぢ何を以てか来て我に帰するや、云く、君子参内の時此を見しに、顕々として威勢あり、故に帰す、ときに孔子弟子に命じて、乗物装束金銀財物等を取出して此を与へて、汝は我に帰するにあらずと云ふてかへせり、
現代語訳
昔、孔子のもとに一人の人があり、来て帰服した。孔子が問うて言った、お前は何をもって来て私に帰服するのか、と。言った、あなたが宮中に参られる時、これを見たところ、堂々として威勢がありました、それゆえ帰服します、と。その時、孔子は弟子に命じて、乗物や装束、金銀財物などを取り出してこれを与えて、お前は私に帰服するのではない、と言って帰らせた。
解説
前段の、外の姿ではなく実の徳で見よという言葉を、孔子の逸話で裏づける。威儀に感じて弟子入りした男に、孔子は望んでいるであろう物をそっくり与えて帰す。あなたが慕っているのは私ではなくこれだ、と示したことになり、断り方そのものが教えになっている。
この章句が説くこと
外相徳威帰依孔子見る目
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