正法眼蔵随聞記 / 巻六
一日示して云く、人ありて法門を問ひ、或は修行の法要を問ことあらば、納子はかならず實を以て是を答べし、若くは他の非器を顧み、或は初心未學の人にて心得べからずして、方便不實を以て答ふべからず、菩薩戒の心は、縱ひ小乘の器ありて小乘の道を問ふとも、只大乘を以て答ふべきなり、如來一期の化儀も亦同じ、方便の權教は實は無益なり、只最後の實教のみ實に益あり、しかあれば他の得不得を論ぜず、只實を以て答ふべきなり、若し箇中の人を見ば、實德を以て是を見るべし、外相假德を以てこれを見るべからず、
新字:一日示して云く、人ありて法門を問ひ、或は修行の法要を問ことあらば、納子はかならず実を以て是を答べし、若くは他の非器を顧み、或は初心未学の人にて心得べからずして、方便不実を以て答ふべからず、菩薩戒の心は、縦ひ小乗の器ありて小乗の道を問ふとも、只大乗を以て答ふべきなり、如来一期の化儀も亦同じ、方便の権教は実は無益なり、只最後の実教のみ実に益あり、しかあれば他の得不得を論ぜず、只実を以て答ふべきなり、若し箇中の人を見ば、実徳を以て是を見るべし、外相仮徳を以てこれを見るべからず、
書き下し
一日示して云く、人ありて法門を問ひ、或は修行の法要を問ことあらば、納子はかならず実を以て是を答べし、若くは他の非器を顧み、或は初心未学の人にて心得べからずして、方便不実を以て答ふべからず、菩薩戒の心は、縦ひ小乗の器ありて小乗の道を問ふとも、只大乗を以て答ふべきなり、如来一期の化儀も亦同じ、方便の権教は実は無益なり、只最後の実教のみ実に益あり、しかあれば他の得不得を論ぜず、只実を以て答ふべきなり、若し箇中の人を見ば、実徳を以て是を見るべし、外相仮徳を以てこれを見るべからず、
現代語訳
ある日、示して言われた。人がいて法門を問い、あるいは修行の要を問うことがあれば、雲水は必ず真実をもってこれに答えるべきである。相手が器でないことを顧みたり、あるいは初心で未熟な人で心得られないだろうといって、方便の不実をもって答えてはならない。菩薩戒の心は、たとえ小乗の器があって小乗の道を問うても、ただ大乗をもって答えるべきである。如来一代の教化の仕方もまた同じである。方便の権りの教えは実は無益である。ただ最後の実の教えだけが真実に益がある。であるから、相手が得るか得ないかを論ぜず、ただ真実をもって答えるべきである。もし本物の人を見るならば、実の徳をもってこれを見るべきである。外の姿や仮の徳をもって見てはならない。
解説
この章句が説くこと
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呂氏春秋・精通③德なる者は、萬民の宰なり。月なる者は、群陰の本なり。月望なれば則ち蚌蛤實ち、群陰盈つ。月晦なれば則ち蚌蛤虚しく、群陰虧く。夫れ月、天に形われて、群陰、淵に化す。聖人、德を己に行いて、四方咸仁に飭し。
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論語・衛霊公篇子曰く、由、徳を知る者は鮮なし。
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論語・為政篇子曰く、之を道びくに政を以てし、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を道びくに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有り且つ格(いた)る。
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