正法眼蔵随聞記 / 巻四
いはんや出家人必ずしも此の心あるべし、出家人はもとより身に財寶なければ、智慧功德を以てたからとす、他の無道心なる、ひがことなんどを直に面てにあらはして、非におとすべからず、方便を以て彼れのはらたつまじき樣に云ふべきなり、暴惡なるは其の法久しからずと云ふ、設ひ法を以て呵噴するとも、あらき言葉なるは法も久しからざるなり、小人下器はいさゝかも人のあらき言ばに必ず卽ちはらたち、恥辱を思ふなり、大人上器には似るべからず、大人はしかあらず設ひ打たるれども報を思はす、今我國には小人多し、つゝしまずんはあるべからざるなり、
新字:いはんや出家人必ずしも此の心あるべし、出家人はもとより身に財宝なければ、智慧功徳を以てたからとす、他の無道心なる、ひがことなんどを直に面てにあらはして、非におとすべからず、方便を以て彼れのはらたつまじき様に云ふべきなり、暴悪なるは其の法久しからずと云ふ、設ひ法を以て呵噴するとも、あらき言葉なるは法も久しからざるなり、小人下器はいさゝかも人のあらき言ばに必ず即ちはらたち、恥辱を思ふなり、大人上器には似るべからず、大人はしかあらず設ひ打たるれども報を思はす、今我国には小人多し、つゝしまずんはあるべからざるなり、
書き下し
いはんや出家人必ずしも此の心あるべし、出家人はもとより身に財宝なければ、智慧功徳を以てたからとす、他の無道心なる、ひがことなんどを直に面てにあらはして、非におとすべからず、方便を以て彼れのはらたつまじき様に云ふべきなり、暴悪なるは其の法久しからずと云ふ、設ひ法を以て呵噴するとも、あらき言葉なるは法も久しからざるなり、小人下器はいさゝかも人のあらき言ばに必ず即ちはらたち、恥辱を思ふなり、大人上器には似るべからず、大人はしかあらず設ひ打たるれども報を思はす、今我国には小人多し、つゝしまずんはあるべからざるなり、
現代語訳
まして出家の人は必ずこの心があるべきである。出家の人はもとより身に財宝がないので、智慧と功徳をもって宝とする。他人が道心なく、間違ったことをしているなどを、直に面と向かって表して、非に落としてはならない。方便をもって、その人が腹を立てないように言うべきである。荒々しく悪いものは、その法が久しくないと言う。たとえ法をもって叱責するとしても、荒い言葉であるならば、その法も久しくないのである。小人や下等の器は、いささかでも人の荒い言葉に必ずすぐ腹を立て、恥辱を思うのである。大人や上等の器には似るべくもない。大人はそうではない。たとえ打たれても報いを思わない。今わが国には小人が多い。慎まなければならないのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『春秋左氏伝』昭公元年 言を以て物を知る三月、甲辰、盟ふ。楚の公子圍服を設け衛を離ぬ。叔孫穆子曰く、「楚の公子美なり、君なるかな」と。鄭の子皮曰く、「二執戈の者前めり」と。蔡の子家曰く、「蒲宮に前有り、亦た可ならずや」と。楚の伯州犁曰く、「此の行や、辭して之を寡君に假れり」と。鄭の行人揮曰く、「假りて反さざらん」と。伯州犁曰く、「子姑く子皙の背誕せんと欲するを憂へよ」と。子羽曰く、「當璧猶ほ在り。假りて反さずとも、子其れ憂ひ無からんや」と。齊の國子曰く、「吾二子に代りて愍ふ」と。陳の公子招曰く、「憂へずんば何ぞ成らん。二子樂しめり」と。衛の齊子曰く、「苟くも或いは之を知らば、憂ふと雖も何ぞ害あらん」と。宋の合左師曰く、「大國令し、小國共す。吾共するを知るのみ」と。晉の樂王鮒曰く、「小旻の卒章善し。吾之に從はん」と。會より退く。子羽子皮に謂ひて曰く、「叔孫は絞にして婉、宋の左師は簡にして禮、樂王鮒は字しみて敬す。子と子家とは之を持す。皆保世の主なり。齊・衛・陳の大夫は、其れ免れざらんか。國子は人に代りて憂ひ、子招は憂ひを樂しみ、齊子は憂ふと雖も害せずとす。夫れ及ばずして憂ふると、憂ふべくして樂しむと、憂へて害せずとするとは、皆憂ひを取るの道なり。憂ひ必ず之に及ばん。大誓に曰く、『民の欲する所は、天必ず之に從ふ』と。三大夫憂ひを兆す、能く至ること無からんや。言以て物を知るとは、其れ是の謂なり」と。
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