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正法眼蔵随聞記 / 巻四

やうやく道理をかんがふれば、名聞を思ふとも、當代下劣の人によしと思はれんよりも、只上古の賢者向後の善人をはづべし、ひとしからんことを思ふとも、此國の人よりも、唐土天竺の先達高僧をはぢて、彼にひとしからんと思ふべし、乃至諸天冥衆諸佛菩薩等にひとしからんとこそ思ふべけれと、この道理を得て後には、此の國の大師等は土瓦の如くおぼえて、從來の身心皆あらためき、佛の一期の行儀を見れは、王位をすてゝ山林に入り、成道の後も一期乞食すと見たたり、律に云く、知家非家捨家出家と云云、

新字:やうやく道理をかんがふれば、名聞を思ふとも、当代下劣の人によしと思はれんよりも、只上古の賢者向後の善人をはづべし、ひとしからんことを思ふとも、此国の人よりも、唐土天竺の先達高僧をはぢて、彼にひとしからんと思ふべし、乃至諸天冥衆諸仏菩薩等にひとしからんとこそ思ふべけれと、この道理を得て後には、此の国の大師等は土瓦の如くおぼえて、従来の身心皆あらためき、仏の一期の行儀を見れは、王位をすてゝ山林に入り、成道の後も一期乞食すと見たたり、律に云く、知家非家捨家出家と云云、

書き下し

やうやく道理をかんがふれば、名聞を思ふとも、当代下劣の人によしと思はれんよりも、只上古の賢者向後の善人をはづべし、ひとしからんことを思ふとも、此国の人よりも、唐土天竺の先達高僧をはぢて、彼にひとしからんと思ふべし、乃至諸天冥衆諸仏菩薩等にひとしからんとこそ思ふべけれと、この道理を得て後には、此の国の大師等は土瓦の如くおぼえて、従来の身心皆あらためき、仏の一期の行儀を見れは、王位をすてゝ山林に入り、成道の後も一期乞食すと見たたり、律に云く、知家非家捨家出家と云云、

現代語訳

次第に道理を考えるようになって、名誉を思うとしても、当代の劣った人によいと思われるよりも、ただ上古の賢者と、これから来る善き人を恥じるべきである。等しくなろうと思うとしても、この国の人よりも、唐土や天竺の先達・高僧を恥じて、彼らに等しくなろうと思うべきである。さらには諸天や冥衆、諸仏菩薩などに等しくなろうとこそ思うべきであると、この道理を得た後には、この国の大師たちは土や瓦のように思われて、従来の身心をみな改めた。仏の一生の行いのさまを見れば、王位を捨てて山林に入り、成道の後も一生乞食されたと見えている。律に言う、家は家に非ずと知って家を捨て、出家せよ、と。

解説

名誉を求める心を消すのではなく、比べる相手を替えることで乗り越えている。当代の人ではなく上古の賢者、この国ではなく唐天竺、さらには諸仏菩薩へと基準を引き上げていく。基準が変わった結果、以前あこがれた大師たちが土瓦のように見えたという言い方が率直で、転換の大きさが伝わる。

この章句が説くこと

名聞基準先達転換出家乞食

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