正法眼蔵随聞記 / 巻三
母儀の一期を待て、其の後障碍なく佛道に入らば、次第本意の如くにして神妙なり、しかあれども、亦知らず、老少不定なれば、若し老母は久くとゞまりて、我は先に去ること出來らん時に、支度相違せば、我れは佛道に入らざることを悔み、老母は是れを許さゞる罪に沉て、兩人倶に益なふして、互に罪を得ん時いかん、
新字:母儀の一期を待て、其の後障碍なく仏道に入らば、次第本意の如くにして神妙なり、しかあれども、亦知らず、老少不定なれば、若し老母は久くとゞまりて、我は先に去ること出来らん時に、支度相違せば、我れは仏道に入らざることを悔み、老母は是れを許さゞる罪に沈て、両人倶に益なふして、互に罪を得ん時いかん、
書き下し
母儀の一期を待て、其の後障碍なく仏道に入らば、次第本意の如くにして神妙なり、しかあれども、亦知らず、老少不定なれば、若し老母は久くとゞまりて、我は先に去ること出来らん時に、支度相違せば、我れは仏道に入らざることを悔み、老母は是れを許さゞる罪に沈て、両人倶に益なふして、互に罪を得ん時いかん、
現代語訳
母上の一生を待って、その後に障りなく仏道に入るならば、順序が本意のとおりで申し分ない。しかしながら、また分からない、老いも若きも定まらないのであるから、もし老母が久しくとどまって、自分が先に去ることになった時、目算が違ってしまえば、自分は仏道に入らなかったことを悔い、老母はそれを許さなかった罪に沈んで、二人ともに益がなく、互いに罪を得る時はどうするのか。
解説
待ってから、という選択が本来は望ましいと認めたうえで、その前提が崩れる場合を示す。老少不定であるから、待つ側が先に死ぬこともある。その時、本人は悔い、母は許さなかったことを悔いる。両者ともに損なわれるという最悪の形を描いて、待つことの危うさを具体的にしている。
この章句が説くこと
老少不定無常孝待つ悔い決断
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