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正法眼蔵随聞記 / 巻三

爾りしこのかた、天竺漢土の祖師の、よきと人にも知られしは、みな貧窮乞食なさしめ給ふなり、況や我が門の祖師、皆な財寶を貯ふべからずとのみ勸むるなり、教家にも此宗を讃するには、先つ貧をほめ、傳來の書錄にも貧を記してほむるなり、いまた財寶に富み、豐かにして佛法を行するとは聞かず、皆よき佛法者と云ふは、或は布納衣常乞食なり、禪門をよき宗と云ひ、禪僧を他に異なりとする初の興りは、むかし教院律院等に雜居せし時にも、身を捨てゝ貧人なるを以てなり、宗門の家風先つ此のことを存知すへし、聖教の文理を待つべきにあらす、

新字:爾りしこのかた、天竺漢土の祖師の、よきと人にも知られしは、みな貧窮乞食なさしめ給ふなり、況や我が門の祖師、皆な財宝を貯ふべからずとのみ勧むるなり、教家にも此宗を讃するには、先つ貧をほめ、伝来の書録にも貧を記してほむるなり、いまた財宝に富み、豊かにして仏法を行するとは聞かず、皆よき仏法者と云ふは、或は布納衣常乞食なり、禅門をよき宗と云ひ、禅僧を他に異なりとする初の興りは、むかし教院律院等に雑居せし時にも、身を捨てゝ貧人なるを以てなり、宗門の家風先つ此のことを存知すへし、聖教の文理を待つべきにあらす、

書き下し

爾りしこのかた、天竺漢土の祖師の、よきと人にも知られしは、みな貧窮乞食なさしめ給ふなり、況や我が門の祖師、皆な財宝を貯ふべからずとのみ勧むるなり、教家にも此宗を讃するには、先つ貧をほめ、伝来の書録にも貧を記してほむるなり、いまた財宝に富み、豊かにして仏法を行するとは聞かず、皆よき仏法者と云ふは、或は布納衣常乞食なり、禅門をよき宗と云ひ、禅僧を他に異なりとする初の興りは、むかし教院律院等に雑居せし時にも、身を捨てゝ貧人なるを以てなり、宗門の家風先つ此のことを存知すへし、聖教の文理を待つべきにあらす、

現代語訳

それよりこのかた、天竺や漢土の祖師で、よい人と知られた者は、みな貧窮で乞食をなさったのである。まして我が門の祖師は、みな財宝を貯えてはならないとばかり勧めるのである。教家でもこの宗を讃えるには、まず貧しさをほめ、伝来の書録にも貧しさを記してほめるのである。いまだ財宝に富み、豊かでありながら仏法を行ずるとは聞かない。みなよい仏法者と言われるのは、あるいは布の衲衣を着、常に乞食する者である。禅門をよい宗と言い、禅僧を他と異なるとする、その初めの興りは、昔、教院や律院などに雑居していた時にも、身を捨てて貧しい人であったことによる。宗門の家風として、まずこの事を知るべきである。聖教の文や理を待つまでもない。

解説

禅が他宗と区別されるようになった起源を、教理ではなく貧しさに求めている。同じ寺に雑居していた時代に、身を捨てて貧しかったことが違いとして目に見えた、という説明である。他宗の書物ですら禅を讃えるときは貧をほめると言い添えて、外からの評価も同じであることを示している。

この章句が説くこと

家風禅門乞食祖師衲衣

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