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正法眼蔵随聞記 / 巻三

夜話に云く、學道の人は最も貧なるべし、世人を見るに、財ある人はまづ嗔恚耻辱の二つの難定めて來るなり、寶あれば人是を奪ひ取らんと思ふ、我は取られじとする時、嗔恚たちまちに起る、或は是を論じて問答對決に及び、つゐには闘爭合戰をいたす、かくの如くのあひだに嗔恚も起り、恥辱も來るなり、貧にして貪ぼらざる時は、先づ此の難を免れて安樂自在なり、證據眼前なり、教文を待べからず、尒のみならず、古聖先賢是を謗り、諸天佛祖皆な是を恥かしむ、然あるに愚癡なる人は財寶を貯へ、そこばくの嗔恚をいだくこと、恥辱の中の恥辱なり、

新字:夜話に云く、学道の人は最も貧なるべし、世人を見るに、財ある人はまづ嗔恚耻辱の二つの難定めて来るなり、宝あれば人是を奪ひ取らんと思ふ、我は取られじとする時、嗔恚たちまちに起る、或は是を論じて問答対決に及び、つゐには闘争合戦をいたす、かくの如くのあひだに嗔恚も起り、恥辱も来るなり、貧にして貪ぼらざる時は、先づ此の難を免れて安楽自在なり、証拠眼前なり、教文を待べからず、爾のみならず、古聖先賢是を謗り、諸天仏祖皆な是を恥かしむ、然あるに愚痴なる人は財宝を貯へ、そこばくの嗔恚をいだくこと、恥辱の中の恥辱なり、

書き下し

夜話に云く、学道の人は最も貧なるべし、世人を見るに、財ある人はまづ嗔恚耻辱の二つの難定めて来るなり、宝あれば人是を奪ひ取らんと思ふ、我は取られじとする時、嗔恚たちまちに起る、或は是を論じて問答対決に及び、つゐには闘争合戦をいたす、かくの如くのあひだに嗔恚も起り、恥辱も来るなり、貧にして貪ぼらざる時は、先づ此の難を免れて安楽自在なり、證拠眼前なり、教文を待べからず、爾のみならず、古聖先賢是を謗り、諸天仏祖皆な是を恥かしむ、然あるに愚癡なる人は財宝を貯へ、そこばくの嗔恚をいだくこと、恥辱の中の恥辱なり、

現代語訳

夜話に言われた。学道の人はもっとも貧しくあるべきである。世の人を見るに、財のある人には、まず瞋恚と恥辱の二つの難が必ず来るのである。宝があれば人はこれを奪い取ろうと思う。自分は取られまいとする時、瞋恚がたちまち起こる。あるいはこれを論じて問答や対決に及び、ついには闘争や合戦をいたす。このようにしている間に瞋恚も起こり、恥辱も来るのである。貧しくて貪らない時は、まずこの難を免れて安楽自在である。証拠は目の前にある。経文を待つまでもない。それだけでなく、古の聖人や先の賢者はこれをそしり、諸天も仏祖もみなこれを恥じさせる。ところが愚かな人は財宝を貯えて、いくばくかの瞋恚を抱くこと、これは恥辱の中の恥辱である。

解説

貧しくあれという勧めが、道徳ではなく因果の観察として述べられている。財があれば奪おうとする者が現れ、守ろうとして怒りが生じ、争いに至って恥をかく。この道筋は目の前に見えるから経文を待つまでもない、という言い方が実証的である。恥辱の中の恥辱という結びが、痛烈な評価になっている。持つことで生じる手間を、一つずつ数えている。

この章句が説くこと

貧財瞋恚恥辱安楽貪り

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