正法眼蔵随聞記 / 巻二
或る時裝問て云く、衲子の行履、舊損の衲衣等を綴り補ふて、すてざればものを貧惜するに似たり、亦舊きをすてゝ新しきを隨て用れば、新しきを貪求する心あり、兩ながら咎あり、畢竟していかんか用心すべき、答て云く、貪惜貪求の二つをだにも離れなば、兩頭ともに失なからん、たゞし破たるを綴て、久からしめて、新きをむさぼらずんば可ならんか、
新字:或る時装問て云く、衲子の行履、旧損の衲衣等を綴り補ふて、すてざればものを貧惜するに似たり、亦旧きをすてゝ新しきを随て用れば、新しきを貪求する心あり、両ながら咎あり、畢竟していかんか用心すべき、答て云く、貪惜貪求の二つをだにも離れなば、両頭ともに失なからん、たゞし破たるを綴て、久からしめて、新きをむさぼらずんば可ならんか、
書き下し
或る時装問て云く、衲子の行履、旧損の衲衣等を綴り補ふて、すてざればものを貧惜するに似たり、亦旧きをすてゝ新しきを随て用れば、新しきを貪求する心あり、両ながら咎あり、畢竟していかんか用心すべき、答て云く、貪惜貪求の二つをだにも離れなば、両頭ともに失なからん、たゞし破たるを綴て、久からしめて、新きをむさぼらずんば可ならんか、
現代語訳
あるとき懐奘が問うて言った。修行僧のふるまいとして、古びて傷んだ衲衣などを綴り補って捨てないでいるのは、物を貪り惜しむのに似ています。また、古いのを捨てて新しいのを次々に用いるならば、新しいのを貪り求める心があります。どちらにも咎があります。つまるところ、どう心得るべきでしょうか。答えて言われた。貪り惜しむことと貪り求めることの二つさえ離れるならば、どちらにも失はないであろう。ただし、破れたのを綴って長く使い、新しいのを貪らないならば、それでよいのではないか。
解説
使い続けるのも、買い替えるのも貪りに見えるという二律背反の問いである。答えは、行為ではなく心の二つの働き、貪惜と貪求を離れよという一点に置かれる。そのうえで実際の勧めは、繕って長く使えという常識的なものになる。原則を示してから具体に降りる答え方が、この書の問答の型になっている。
この章句が説くこと
貪り衣少欲執着行履判断
関連する章句
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『正法眼蔵随聞記』巻一亦云く、大衆不対の時、我れ南泉ならば、大衆既に道不得と云て、便ち猫児を放下してまじ、古人の云く、大用現前して軌則を存せずと、
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