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正法眼蔵随聞記 / 巻一

救使引去て截らんとする時少も愁る氣色なし、還て喜ぶ氣色あり、自ら云く、今生の命は一切衆生に施すと、救使驚き怪で帝に奏聞す、帝云く然り、定て深き心有ん、此事あるべしと兼て是を知ると、依で其志を問ふ、師云く、官を辭して命を捨て、施を行じて衆生に緣を結び、生を佛家に受て一向に佛道を行せんと思ふと、帝是を感じて許して出家せしむ、故に延壽と名を賜ふ、殺すべきをとヾむる故なり、

新字:救使引去て截らんとする時少も愁る気色なし、還て喜ぶ気色あり、自ら云く、今生の命は一切衆生に施すと、救使驚き怪で帝に奏聞す、帝云く然り、定て深き心有ん、此事あるべしと兼て是を知ると、依で其志を問ふ、師云く、官を辞して命を捨て、施を行じて衆生に縁を結び、生を仏家に受て一向に仏道を行せんと思ふと、帝是を感じて許して出家せしむ、故に延寿と名を賜ふ、殺すべきをとヾむる故なり、

書き下し

救使引去て截らんとする時少も愁る気色なし、還て喜ぶ気色あり、自ら云く、今生の命は一切衆生に施すと、救使驚き怪で帝に奏聞す、帝云く然り、定て深き心有ん、此事あるべしと兼て是を知ると、依で其志を問ふ、師云く、官を辞して命を捨て、施を行じて衆生に縁を結び、生を仏家に受て一向に仏道を行せんと思ふと、帝是を感じて許して出家せしむ、故に延寿と名を賜ふ、殺すべきをとヾむる故なり、

現代語訳

刑使が引き立てて首を切ろうとしたとき、少しも愁える様子がない。かえって喜ぶ様子がある。自ら言った。今生の命は一切衆生に施す、と。刑使は驚き怪しんで帝に奏上した。帝は言った。そのとおりだ、きっと深い心があるだろう、このことがあるだろうと、かねてよりこれを知っていた、と。そこでその志を問うた。師は言った。官を辞して命を捨て、施しを行じて衆生と縁を結び、生を仏家に受けて、ひたすらに仏道を行じようと思うのです、と。帝はこれに感じ入って、許して出家させた。それゆえ延寿と名を賜った。殺すべきところを止めたからである。

解説

盗みは私腹のためではなく、命を捨てて衆生と縁を結ぶための行いだったと明かされる。喜ぶ様子で刑場に立ったことがその証しになった。延寿という名は、殺すべき命を延ばしたことに由来すると説明される。名の由来を通して、この人の出発点が命を惜しまない一念にあったことが記憶に残る形で示されている。

この章句が説くこと

発心施し覚悟衆生出家延寿

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