正法眼蔵随聞記 / 巻一
此の如きの心を以てこそ、衆をも接し化をも宣ふべけれ、住持長老なればとて、亂に衆を領し、我が物に思ふて呵噴するは非なり、況や其人にあらずして、人の短處を云ひ他の非を謗るは非なり、能々用心すべきなり、他の非を見て惡しゝと思ふて、慈悲を以て化せんと思はゝ、腹立まじきやうに、方便して、傍ら事を云ふやうにて、こしらふべきなり、
新字:此の如きの心を以てこそ、衆をも接し化をも宣ふべけれ、住持長老なればとて、乱に衆を領し、我が物に思ふて呵噴するは非なり、況や其人にあらずして、人の短処を云ひ他の非を謗るは非なり、能々用心すべきなり、他の非を見て悪しゝと思ふて、慈悲を以て化せんと思はゝ、腹立まじきやうに、方便して、傍ら事を云ふやうにて、こしらふべきなり、
書き下し
此の如きの心を以てこそ、衆をも接し化をも宣ふべけれ、住持長老なればとて、乱に衆を領し、我が物に思ふて呵噴するは非なり、況や其人にあらずして、人の短処を云ひ他の非を謗るは非なり、能々用心すべきなり、他の非を見て悪しゝと思ふて、慈悲を以て化せんと思はゝ、腹立まじきやうに、方便して、傍ら事を云ふやうにて、こしらふべきなり、
現代語訳
このような心をもってこそ、衆をも導き、教化をも述べるべきである。住持や長老だからといって、みだりに衆を従え、自分の物のように思ってしかるのは非である。まして、その任にある人でもないのに、人の短所を言い、他人の非をそしるのは非である。よくよく用心すべきである。他人の非を見て悪いと思い、慈悲をもって教化しようと思うなら、腹が立たないように工夫して、かたわらの事を言うようにして取りなすべきである。
解説
この章句が説くこと
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『学問のすゝめ』四編・学者の職分を論ず・利あらざるものは必ず害あり以上論ずるところを概すれば、今の世の学者、この国の独立を助けなさんとするに当たりて、政府の範囲に入り官にありて事をなすと、その範囲を脱して私立するとの利害得失を述べ、本論は私立に左袒したるものなり。すべて世の事物をくわしく論ずれば、利あらざるものは必ず害あり、得あらざるものは必ず失あり、利害得失相半ばするものはあるべからず。わが輩もとよりためにするところありて私立を主張するにあらず、ただ平生の所見を証してこれを論じたるのみ。世人もし確証を掲げてこの論説を排し、明らかに私立の不利を述ぶる者あらば、余輩は悦んでこれに従い、天下の害をなすことなかるべし。
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