幽夢影 / 巻下・世人の閒にする所に忙しくす
能閒世人之所忙者,方能忙世人之所閒。
書き下し
能く世人の忙しくする所に閒なる者にして、方に能く世人の閒にする所に忙しくす。
現代語訳
世の人が忙しくしていることに対してゆったり構えていられる人だけが、世の人がなおざりにしていることに忙しく打ち込むことができます。
解説
忙しさと暇の向け先を入れ替えてみせた、鏡合わせの一則です。世の人が忙しくしているのは、出世や金もうけや付き合いといった事柄です。それに振り回されない人だけが、世の人が暇つぶしとしか思わない読書や風雅、心を養うことに、本気で時間を注げると張潮は言います。時間は限られているので、何かに忙しくすれば、何かを手放すことになります。何に忙しくするかは、何を大切にするかの表れだということです。張潮自身が『幽夢影』で語ってきた、花や月や書物への打ち込み方の根にある考えでもあります。周りに合わせて忙しくする前に、自分が本当に時間を注ぎたいことは何かを問い直したくなります。
この章句が説くこと
閑適時間立志処世取捨
関連する章句
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『幽夢影』巻上・人は閒より樂しきは莫し人は閒より樂しきは莫し、事とする所無きの謂に非ざるなり。閒なれば則ち能く書を讀み、閒なれば則ち能く名勝に遊び、閒なれば則ち能く益友に交はり、閒なれば則ち能く酒を飲み、閒なれば則ち能く書を著す。天下の樂しみ、孰れか是れより大ならん。
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『幽夢影』巻下・專ら交遊を務むれば己を累はす生產を治めざれば、其の後必ず人を累はすを致す。專ら交遊を務むれば、其の後必ず己を累はすを致す。
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『幽夢影』巻下・忙人の硯は尤も佳からざるべからず閒人の硯は、固より其の佳きを欲す。而して忙人の硯は、尤も佳からざるべからず。娛情の妾は、固より其の美しきを欲す。而して廣嗣の妾も、亦美しからざるべからず。
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『幽夢影』巻下・忙人の園亭は住宅と相連なるべし忙人の園亭は、宜しく住宅と相連なるべく、閒人の園亭は、住宅と相遠きを妨げず。
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『幽夢影』巻下・淸高なるも時務を識らざるに流るる莫かれ渉獵は無用と曰ふと雖も、猶ほ古今に通ぜざるに勝る。淸高は固より嘉すべきも、時務を識らざるに流るること莫かれ。
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『幽夢影』巻下・書有れば必ず當に讀むべし天下に書無ければ則ち已む、有れば則ち必ず當に讀むべし。酒無ければ則ち已む、有れば則ち必ず當に飲むべし。名山無ければ則ち已む、有れば則ち必ず當に遊ぶべし。花月無ければ則ち已む、有れば則ち必ず當に賞玩すべし。才子佳人無ければ則ち已む、有れば則ち必ず當に愛慕憐惜すべし。