幽夢影 / 巻下・忙人の硯は尤も佳からざるべからず
閒人之硯,固欲其佳;而忙人之硯,尤不可不佳。娛情之妾,固欲其美;而廣嗣之妾,亦不可不美。
新字:閒人之硯,固欲其佳;而忙人之硯,尤不可不佳。娯情之妾,固欲其美;而広嗣之妾,亦不可不美。
書き下し
閒人の硯は、固より其の佳きを欲す。而して忙人の硯は、尤も佳からざるべからず。娛情の妾は、固より其の美しきを欲す。而して廣嗣の妾も、亦美しからざるべからず。
現代語訳
暇な人の硯は、もちろん良いものであってほしいものです。けれども忙しい人の硯こそ、なおさら良いものでなければなりません。心を楽しませるための側室は、もちろん美しくあってほしいものです。けれども跡継ぎを得るための側室も、やはり美しくなければなりません。
解説
道具や人を、目的だけで選んではならないと説いた一則です。暇な人が良い硯を欲しがるのは当然ですが、忙しく書き物をする人こそ、墨がよくおりる良い硯でなければ仕事がはかどりません。後半は当時の家族制度を背景にしたもので、跡継ぎを得るための側室であっても、美しさを軽んじてはならないと言います。実用のためだからと質を落とさないという考えです。友人の江含徴が「硯が美しければ墨のおりがよいが、側室が美しければ妬みを招く」と言うと、張竹坡は「妬みは側室の心にあるのであって、美しさにあるのではない」と返しています。前半の、忙しい人ほど良い道具を使えという教えは、今の仕事にもそのまま当てはまります。
この章句が説くこと
道具硯実用文房質
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