幽夢影 / 巻下・淸高なるも時務を識らざるに流るる莫かれ
渉獵雖曰無用,猶勝於不通古今;淸高固然可嘉,莫流於不識時務。
新字:渉猟雖曰無用,猶勝於不通古今;清高固然可嘉,莫流於不識時務。
書き下し
渉獵は無用と曰ふと雖も、猶ほ古今に通ぜざるに勝る。淸高は固より嘉すべきも、時務を識らざるに流るること莫かれ。
現代語訳
広く浅く読みあさることは役に立たないと言われますが、それでも昔と今のことに通じていないよりはましです。清らかで気高いことはもちろんほめるべきことですが、世の中の急務を知らない人間になってはいけません。
解説
読書と人柄について、行き過ぎを戒めた現実的な一則です。渉猟は書物を広く読みあさることで、学問の世界では浅いと軽んじられがちでした。張潮はそれでも、何も知らないよりはよいと擁護します。一方、清高は俗事を離れた高潔さで、称賛される美徳ですが、それが世の中の実情に疎いことの言い訳になってはならないと釘を刺します。友人の張竹坡は「時勢に合わないのはかまわないが、時務に通じないのはいけない」と、うまく区別しています。専門を深めることも理想を持つことも大切ですが、世の中の動きに目を配る広さを失わないことが、実際に役立つ人の条件なのでしょう。
この章句が説くこと
時務読書学問処世清高
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