幽夢影 / 巻下・水の聲爲る四有り
水之爲聲有四:有瀑布聲,有流泉聲,有灘聲,有溝澮聲。風之爲聲有三:有松濤聲,有秋葉聲,有波浪聲;雨之爲聲有二:有梧蕉荷葉上聲,有承簷溜竹筒中聲。
新字:水之為声有四:有瀑布声,有流泉声,有灘声,有溝澮声。風之為声有三:有松濤声,有秋葉声,有波浪声;雨之為声有二:有梧蕉荷葉上声,有承簷溜竹筒中声。
書き下し
水の聲爲る四有り。瀑布の聲有り、流泉の聲有り、灘の聲有り、溝澮の聲有り。風の聲爲る三有り。松濤の聲有り、秋葉の聲有り、波浪の聲有り。雨の聲爲る二有り。梧蕉荷葉の上の聲有り、簷溜を竹筒の中に承くるの聲有り。
現代語訳
水の音には四つあります。滝の音、流れる泉の音、早瀬の音、溝を流れる水の音です。風の音には三つあります。松を渡る風の音、秋の木の葉の音、波の音です。雨の音には二つあります。桐や芭蕉や蓮の葉の上に落ちる音と、軒先の雨だれを竹筒で受ける音です。
解説
水・風・雨の音を聞き分けて、それぞれの趣を数え上げた一則です。水は、滝の轟き、泉のせせらぎ、早瀬のざわめき、溝のちょろちょろという音と、流れ方で表情を変えます。風は、それ自体には音がなく、松や木の葉や波に触れてはじめて音になるものとして挙げられています。雨は、大きな葉に当たる音と、竹筒に落ちる雨だれの音という、住まいの中で聞く音が選ばれています。どれも静かに耳を澄ませる文人の暮らしから生まれた聞き分けです。友人で弟の張木山は「中でも水の音がいちばん厭わしい、止むときがなく耳にうるさい」と正直に言っています。身の回りの音を丁寧に聞き分けると、何気ない一日が豊かになります。
この章句が説くこと
音自然閑適風雅雨
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