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幽夢影 / 巻上・松下に琴を聽く

松下聽琴;月下聽簫;澗邊聽瀑布;山中聽梵唄,覺耳中別有不同。

新字:松下聴琴;月下聴簫;澗辺聴瀑布;山中聴梵唄,覚耳中別有不同。

書き下し

松下に琴を聽き、月下に簫を聽き、澗邊に瀑布を聽き、山中に梵唄を聽けば、耳中に別に同じからざる有るを覺ゆ。

現代語訳

松の木の下で琴を聴き、月の下で簫を聴き、谷川のほとりで滝の音を聴き、山の中で読経の声を聴くと、耳の中にふだんとはまったく違う響きがあるのを感じます。

解説

音そのものだけでなく、聴く場所が響きを変えることを語った一則です。松風の中で聴く琴、月明かりの下で聴く簫、谷川の岸で聴く滝の轟き、山寺から流れてくる梵唄は、同じ音でも町中で聴くのとはまるで違って聞こえます。梵唄は僧が節をつけて唱える経文や讃歌のことです。環境と音とが溶け合ったとき、耳は別の世界を聴き取るというわけです。友人の張竹坡は、その違いは知らない人に説明するのが難しいと言い、倪永清は、違うという二字がわかってこそ、この清らかな音を楽しむ資格があると評しています。同じ音楽や言葉も、どこで受け取るかで心への届き方が変わります。

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