幽夢影 / 巻上・松下に琴を聽く
松下聽琴;月下聽簫;澗邊聽瀑布;山中聽梵唄,覺耳中別有不同。
新字:松下聴琴;月下聴簫;澗辺聴瀑布;山中聴梵唄,覚耳中別有不同。
書き下し
松下に琴を聽き、月下に簫を聽き、澗邊に瀑布を聽き、山中に梵唄を聽けば、耳中に別に同じからざる有るを覺ゆ。
現代語訳
松の木の下で琴を聴き、月の下で簫を聴き、谷川のほとりで滝の音を聴き、山の中で読経の声を聴くと、耳の中にふだんとはまったく違う響きがあるのを感じます。
解説
音そのものだけでなく、聴く場所が響きを変えることを語った一則です。松風の中で聴く琴、月明かりの下で聴く簫、谷川の岸で聴く滝の轟き、山寺から流れてくる梵唄は、同じ音でも町中で聴くのとはまるで違って聞こえます。梵唄は僧が節をつけて唱える経文や讃歌のことです。環境と音とが溶け合ったとき、耳は別の世界を聴き取るというわけです。友人の張竹坡は、その違いは知らない人に説明するのが難しいと言い、倪永清は、違うという二字がわかってこそ、この清らかな音を楽しむ資格があると評しています。同じ音楽や言葉も、どこで受け取るかで心への届き方が変わります。

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史記 楽書是の故に志微焦衰の音作りて、民思憂す。嘽緩慢易繁文簡節の音作りて、民康楽す。粗厲猛起奮末広賁の音作りて、民剛毅なり。廉直経正荘誠の音作りて、民粛敬す。寛裕肉好順成和動の音作りて、民慈愛す。流辟邪散狄成滌濫の音作りて、民淫乱す。是の故に先王は之を情性に本づけ、之を度数に稽へ、之を礼義に制し、生気の和に合し、五常の行ひを道き、之をして陽にして散ぜず、陰にして密ならず、剛気怒らず、柔気懾れず、四暢中に交はりて外に発作し、皆其の位に安んじて相奪はざらしむ。然る後に之が学等を立て、其の節奏を広め、其の文采を省き、以て徳の厚きを縄す。小大の称を類し、終始の序を比し、以て事行に象り、親疏貴賤長幼男女の理をして皆楽に形見せしむ。故に曰く「楽は其れ深きを観る」と。土敝るれば則ち草木長ぜず、水煩はしければ則ち魚鼈大ならず、気衰ふれば則ち生物育たず、世乱るれば則ち礼廃れて楽淫す。是の故に其の声哀しみて荘ならず、楽しみて安からず、慢易にして以て節を犯し、流湎して以て本を忘る。広ければ則ち姦を容れ、狭ければ則ち欲を思ひ、滌蕩の気に感じて平和の徳を滅ぼす、是を以て君子之を賤しむなり。凡そ姦声人を感ぜしめて逆気之に応じ、逆気象を成して淫楽興る。正声人を感ぜしめて順気之に応じ、順気象を成して和楽興る。倡和応有り、回邪曲直各々其の分に帰して、万物の理類を以て相動くなり。是の故に君子は情に反りて以て其の志を和し、類を比べて以て其の行ひを成す。
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史記 楽書先王其の乱を悪む、故に雅頌の声を制して以て之を道き、其の声をして以て楽しみて流れざるに足らしめ、其の文をして以て綸して息まざるに足らしめ、其の曲直繁省廉肉節奏をして、以て人の善心を感動せしむるに足らしむるのみ、放心邪気をして接するを得しめず、是れ先王の楽を立つるの方なり。是の故に楽は宗廟の中に在りて、君臣上下同じく之を聴けば、則ち和敬せざる莫し。族長郷里の中に在りて、長幼同じく之を聴けば、則ち和順せざる莫し。閨門の内に在りて、父子兄弟同じく之を聴けば、則ち和親せざる莫し。故に楽は、一を審らかにして以て和を定め、物を比べて以て節を飾り、節奏合して以て文を成す、父子君臣を合和し、万民を附親する所以なり、是れ先王の楽を立つるの方なり。故に其の雅頌の声を聴けば、志意広きを得。其の干戚を執り、其の俯仰詘信を習へば、容貌荘なるを得。其の綴兆を行ひ、其の節奏に要すれば、行列正しきを得、進退斉しきを得。故に楽は天地の斉、中和の紀、人情の免るる能はざる所なり。夫れ楽は、先王の喜びを飾る所以なり。軍旅鈇鉞は、先王の怒りを飾る所以なり。故に先王の喜怒は皆其の斉を得。喜べば則ち天下之に和し、怒れば則ち暴乱の者之を畏る。先王の道、礼楽盛んなりと謂ふべし。魏の文侯、子夏に問ひて曰く、「吾、端冕して古楽を聴けば則ち唯臥せんことを恐れ、鄭衛の音を聴けば則ち倦むを知らず。敢へて問ふ、古楽の彼の如きは何ぞや。新楽の此の如きは何ぞや」と。子夏答へて曰く、「今夫れ古楽は、進旅退旅し、和正にして以て広く、弦匏笙簧、拊鼓に合守し、始め奏するに文を以てし、乱を止むるに武を以てし、乱を治むるに相を以てし、疾きを訊むるに雅を以てす。君子是に於いて語り、是に於いて古を道ひ、身を修めて家に及び、天下を平均す。此れ古楽の発なり。
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『十善法語』巻第四・不妄語戒左伝ニ。八音ヲ節ニシテ八風ヲ行フトアリ。書経ニ。夔カ石ヲ拊擊スレハ。百獣率ヰ舞トアル。毗奈耶雑事ニ。緊那羅女ヨリ伝ヘシ箜篌ノ第一絃ヲ奏スルトキ。船舶破砕シ。商人悉ク漂没ストアル。又史記ニ。晋ノ平公音ヲ好ム。師曠カ黄帝合鬼神ノ楽ヲ奏ス。晋ノ国三年旱スト有ル。殷ノ紂王カ靡靡ノ楽ヲ作ル。是ニ由テ国ヲ亡スト云コトシヤ。此等ヲモ虚言トハカリ云レヌシヤ。近代書生ノ類カ大言ヲ好テ古人ヲ排シ。此般ノ事ヲ疑フハ。古ヲ信スルコトノナキト云ヘシ。孔子モ信シテ古ヲ好ムトアル。古ヲハ信スヘキコトシヤ。
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『十善法語』巻第五・不綺語戒又晋ノ劉現ガ晋陽ニ在テ胡騎ニ囲レシトキ。月夜ニ城楼ノ上ニ登テ嘯ク。胡人ガ聞テミナ凄凄トシテ嘆ス。中夜ニ至テ胡笳ヲ奏ス。胡人カ聞テ皆涙ヲ流シテ郷国ノ懐ヲ起シ。終ニ囲ヲ解キ去シトアル。此ニ由テ見レハ。声韻ヲ以テ敵ヲ退ケ国ヲ全スルモ。アルヘキ理シヤ。楽師伶人ニテ云ハハ。此声韻ニ由テ道ニ入ヘシ。未タ道ニ至ラストモ。心ヲ専一ニ用ヒハ。天ヨリ分付スルトコロノ実ノ楽ヲ得ヘシ。狂言綺語トハ違フシヤ。
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