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幽夢影 / 巻上・筆硯は精ならざるべからず

雖不善書,而筆硯不可不精;雖不業醫,而驗方不可不存;雖不工弈,而楸枰不可不備。

新字:雖不善書,而筆硯不可不精;雖不業医,而験方不可不存;雖不工弈,而楸枰不可不備。

書き下し

書を善くせずと雖も、筆硯は精ならざるべからず。醫を業とせずと雖も、驗方は存せざるべからず。弈に工みならずと雖も、楸枰は備へざるべからず。

現代語訳

書が上手でなくても、筆と硯は良いものでなければなりません。医者を仕事にしていなくても、効き目の確かな処方は手元に残しておかなければなりません。碁が上手でなくても、碁盤は備えておかなければなりません。

解説

得意でなくても、道具や備えは整えておけという三つの心得を並べた一則です。字が下手でも筆と硯が良ければ、書く楽しみも客を迎える品格も保てます。医者でなくても確かな処方を控えておけば、いざという時に家族や人の役に立ちます。碁が弱くても碁盤があれば、訪れた客と一局を楽しむことができます。楸枰は楸の木で作った碁盤のことです。友人の江含徵は、酒が飲めなくても良い酒は蔵しておくべきで、これが蘇東坡の東坡たるところだと言い、畢右万は、武芸を習わなくても弓矢は張っておくべきだと添えています。自分の腕前とは別に、備えを整えておく心がけは、暮らしにも仕事にも役立ちます。

この章句が説くこと

風雅備え閑適道具心得

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