幽夢影 / 巻下・古今萬世の寶
才子而美姿容,佳人而工著作,斷不能永年者,匪獨爲造物之所忌。蓋此種原不獨爲一時之寶,乃古今萬世之寶,故不欲久留人世以取褻耳!
新字:才子而美姿容,佳人而工著作,断不能永年者,匪独為造物之所忌。蓋此種原不独為一時之宝,乃古今万世之宝,故不欲久留人世以取褻耳!
書き下し
才子にして姿容美しく、佳人にして著作に工なる、斷じて年を永くする能はざる者は、獨り造物の忌む所と爲るのみに匪ず。蓋し此の種は原獨り一時の寶爲るのみならず、乃ち古今萬世の寶なり、故に久しく人世に留まりて以て褻を取るを欲せざるのみ。
現代語訳
才能があって容姿も美しい男性や、美しくて文章にも優れた女性が、決して長生きできないのは、ただ造物主に妬まれるからだけではありません。こうした人々はもともと一時代の宝であるだけでなく、古今万世の宝です。だからこそ、この世に長くとどまって、なれなれしく軽んじられることを望まないのでしょう。
解説
才色兼備の人が早世することへの、張潮なりの慰めを語った一則です。昔から、天は優れた人を妬むので長生きさせないという考えがあり、才子佳人の短命は嘆きの種でした。張潮はそれを一歩進め、そうした人は万世の宝なので、長く俗世にいて人に慣れ親しまれ、ありがたみが薄れることを避けたのだと言います。褻は、なれなれしくして軽んじることです。早すぎる死を、宝がその輝きを守るための選択として捉え直しているのです。友人の鄭破水は「千古の傷心、声をそろえて一哭」と悲しみ、王司直は「千古の傷心者も、これを読めば泣かずにすむ」と応じています。喪失を意味づけ直す、やさしい知恵が感じられます。
この章句が説くこと
才子佳人夭折慰め情
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