幽夢影 / 巻下・多情なる者は必ず色を好む
多情者必好色,而好色者未必盡屬多情;紅顏者必薄命,而薄命者未必盡屬紅顏;能詩者必好酒,而好酒者未必盡屬能詩。
新字:多情者必好色,而好色者未必尽属多情;紅顔者必薄命,而薄命者未必尽属紅顔;能詩者必好酒,而好酒者未必尽属能詩。
書き下し
多情なる者は必ず色を好むも、色を好む者は未だ必ずしも盡く多情に屬せず。紅顏なる者は必ず薄命なるも、薄命なる者は未だ必ずしも盡く紅顏に屬せず。能く詩する者は必ず酒を好むも、酒を好む者は未だ必ずしも盡く能詩に屬せず。
現代語訳
情の深い人は必ず美しいものを好みますが、美しいものを好む人がみな情が深いとは限りません。美しい人は必ず不運ですが、不運な人がみな美しいとは限りません。詩のうまい人は必ず酒を好みますが、酒を好む人がみな詩がうまいとは限りません。
解説
「甲ならば乙、しかし乙ならば甲とは限らない」という形を三度繰り返した一則です。多情と好色、紅顔と薄命、能詩と好酒という、昔から結びつけて語られてきた組み合わせを取り上げています。紅顔薄命は、美人は幸薄いという古い言い回しです。張潮は、結びつきを認めつつも、逆にたどると成り立たないことを指摘して、好色な人や酒飲みが自分を多情や詩人に見せかけるのを皮肉っています。友人の洪秋士は「世には詩がうまくても酒を好まない人もいる」と、前提そのものに異を唱えています。見た目の共通点から人を判断するときに、論理の向きを取り違えていないか確かめる手がかりになります。
この章句が説くこと
論理多情詩酒見方人物
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