幽夢影 / 巻下・傲骨は無かるべからず
傲骨不可無,傲心不可有。無傲骨則近於鄙夫,有傲心不得爲君子。
新字:傲骨不可無,傲心不可有。無傲骨則近於鄙夫,有傲心不得為君子。
書き下し
傲骨は無かるべからず、傲心は有るべからず。傲骨無ければ則ち鄙夫に近く、傲心有れば君子爲るを得ず。
現代語訳
気骨としての誇りはなくてはなりませんが、人を見下す心はあってはなりません。気骨としての誇りがなければ卑しい人間に近くなり、人を見下す心があれば君子にはなれません。
解説
似て非なる二つの傲りを、骨と心に分けて説いた一則です。傲骨は権力や金にこびない硬い気骨、傲心は自分を高くして人を見下す心のことです。張潮は、前者を持たなければ鄙夫、つまり利に走る卑しい人間になり、後者を持てば君子の資格を失うと言います。誇りは持ちながら、おごりは持たないという、難しいけれども大切な線引きです。友人の呉街南は「君子のそばでは骨も傲ってはならず、鄙夫の前では心も傲らずにはいられない」と、相手によって使い分けを説いています。石天外は「道学者の言葉を、才人の筆で書いたもの」と評しています。仕事でも、譲れない矜持と、人への敬意を両立させたいものです。
この章句が説くこと
気骨謙虚修身君子矜持
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集奇・人に傲るに如かざるを以てせず君子は人に傲るに如かざるを以てせず、人を疑ふに不肖を以てせず。
-
『格言聯璧』持躬類・蓋世の功勞も一箇の矜の字に當らず眞才有る者は、必ず才に矜らず。 實學有る者は、必ず學を誇らず。 蓋世の功勞も、一箇の矜の字に當り得ず。 彌天の罪惡も、最も一箇の悔の字を得難し。 罪を諉り功を掠むるは、此れ小人の事なり。罪を掩ひ功を誇るは、此れ衆人の事なり。
-
荀子・哀公篇哀公曰く、善し。敢えて問う、何如なれば斯ち之を君子と謂うべきか、と。孔子対えて曰く、所謂る君子なる者は、言は忠信にして心に徳とせず、仁義身に在りて色に伐(ほこ)らず、思慮明通にして辞は争わず。故に猶然として将に及ぶべきが如き者は、君子なり、と。
-
孔子家語・五儀解公曰く、「何をか君子と謂う。」孔子曰く、「所謂君子なる者は、言必ず忠信にして心に怨みず、仁義身に在りて色に伐る無く、思慮通明にして辞専らにせず。篤行信道、自強息まず。油然として将に越ゆべきが若くにして、終に及ぶべからざる者なり。此れ則ち君子なり。
-
『長短経』品目所謂君子なる者は、言は必ず忠信にして心に忌まず、〔忌は怨害なり。〕仁義身に在りて色に伐らず、思慮通明にして辞に専らならず、篤く行い道を信じ、自強して息まず、油然として将に越ゆ可きが若くにして終に及ぶ可からざる者なり。此れ君子なり。
-
論語・学而篇子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」