幽夢影 / 巻下・文を作るの法
作文之法:意之曲折者,宜寫之以顯淺之詞;理之顯淺者,宜運之以曲折之筆;題之熟者,參之以新奇之想;題之庸者,深之以關繫之論。至於窘者舒之使長,縟者刪之使簡,俚者文之使雅,鬧者攝之使靜,皆所謂裁制也。
新字:作文之法:意之曲折者,宜写之以顕浅之詞;理之顕浅者,宜運之以曲折之筆;題之熟者,参之以新奇之想;題之庸者,深之以関繋之論。至於窘者舒之使長,縟者刪之使簡,俚者文之使雅,鬧者摂之使静,皆所謂裁制也。
書き下し
文を作るの法は、意の曲折なる者は、宜しく之を寫すに顯淺の詞を以てすべく、理の顯淺なる者は、宜しく之を運らすに曲折の筆を以てすべし。題の熟せる者は、之に參ふるに新奇の想を以てし、題の庸なる者は、之を深むるに關繫の論を以てす。窘なる者は之を舒べて長からしめ、縟なる者は之を刪りて簡ならしめ、俚なる者は之を文りて雅ならしめ、鬧なる者は之を攝めて靜ならしむるに至りては、皆所謂裁制なり。
現代語訳
文章を作る方法はこうです。込み入った考えは、分かりやすく平易な言葉で書き表すのがよく、分かりやすい道理は、曲折のある筆づかいで展開するのがよいのです。書き尽くされた題には新奇な発想を加え、平凡な題には大事な論点につなげて深みを持たせます。窮屈なものはのびやかにして長くし、ごてごてしたものは削って簡潔にし、卑俗なものは整えて雅やかにし、騒がしいものは引き締めて静かにする。これらはみな、いわゆる裁ち方の工夫です。
解説
文章術の要点を、対になる処方で簡潔にまとめた一則です。難しい内容はやさしい言葉で、やさしい内容は工夫した筆で書けというのは、読み手を退屈させず、しかも迷わせないための知恵です。ありふれた題には新しい視点を、平凡な題には大きな問題とのつながりを加えよという助言も、今の企画書や記事づくりにそのまま使えます。後半の四つは、足りないものを補い、余計なものを削り、粗いものを整え、うるさいものを静めるという推敲の心得です。裁制は布を裁って衣を仕立てるように、文章を整えることをいいます。友人の王丹麓は「文章家の秘訣を洗いざらい示した」と評しています。
この章句が説くこと
作文推敲文章簡潔学問
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