幽夢影 / 巻下・皆奈何ともすべき無きの事
鏡不幸而遇嫫母,硯不幸而遇俗子,劍不幸而遇庸將;皆無可奈何之事。
新字:鏡不幸而遇嫫母,硯不幸而遇俗子,剣不幸而遇庸将;皆無可奈何之事。
書き下し
鏡は不幸にして嫫母に遇ひ、硯は不幸にして俗子に遇ひ、劍は不幸にして庸將に遇ふ。皆奈何ともすべき無きの事なり。
現代語訳
鏡が不運にも嫫母(伝説の醜女)の持ち物になり、硯が不運にも俗物の手に渡り、剣が不運にも凡庸な将軍の手に渡る。どれも、どうすることもできないことです。
解説
よい道具が、ふさわしくない持ち主に巡り合う不運を三つ並べた一則です。嫫母は黄帝の妃とされ、容貌は醜いが賢かったと伝えられる女性で、醜女の代名詞として使われます。鏡は美しい人を映してこそ、硯は文人に使われてこそ、剣は名将に振るわれてこそ、その値打ちを発揮します。道具の側からは持ち主を選べないのが、なんともやるせないというわけです。友人の曹沖谷は「最もどうしようもないのは、美しい人が決まって愚かな男に添うことだ」と評しています。人の才能も、生かしてくれる上司や場に恵まれるかどうかで輝き方が変わります。人を預かる立場なら、自分が庸将になっていないか省みたくなります。
この章句が説くこと
適材不遇人材道具処世
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