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幽夢影 / 巻下・字を識るの過に非ず

昔人云:「婦人識字,多致誨淫。」予謂此非識字之過也。蓋識字則非無聞之人,其淫也,人易得而知耳。

書き下し

昔人云ふ、「婦人字を識れば、多く淫を誨ふるを致す」と。予謂へらく此れ字を識るの過に非ざるなり。蓋し字を識れば則ち無聞の人に非ず、其の淫するや、人得て知り易きのみ。

現代語訳

昔の人は「女性が文字を知ると、多くはふしだらなことを招く」と言いました。私は、これは文字を知ることの罪ではないと思います。文字を知っている女性は世に知られない人ではないので、その身持ちが悪いと、人に知られやすいというだけのことです。

解説

女性が文字を学ぶことを危ぶむ当時の俗説に、張潮が反論した一則です。昔の中国では、女性に学問は不要で、読み書きを覚えると恋文や艶っぽい小説に触れて身を誤るという考えが根強くありました。張潮はこれを、文字を知る女性は名が知られているので、過ちがあれば目立つにすぎないと切り返します。原因と、目につきやすさとを取り違えているという指摘です。友人の李若金は「貞淑な人は字を知ればますます貞淑になり、ふしだらな人は字を知らなくてもふしだらだ」と明快に評しています。目立つ事例だけを見て、ある性質を原因と決めつけていないか、考えさせられる一則です。

この章句が説くこと

識字女性偏見学問見方

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