幽夢影 / 巻下・世間の大不平は劍に非ざれば消えず
胸中小不平,可以酒消之;世間大不平,非劍不能消也。
新字:胸中小不平,可以酒消之;世間大不平,非剣不能消也。
書き下し
胸中の小不平は、酒を以て之を消すべし。世間の大不平は、劍に非ざれば消す能はざるなり。
現代語訳
胸の中の小さな不満は、酒で消すことができます。世の中の大きな不公平は、剣でなければ消すことができません。
解説
個人の鬱屈と社会の不正とを、酒と剣で対比した豪快な一則です。胸のつかえを酒で流すという発想は、『世説新語』に阮籍の胸の塊を酒でそそぐ話があるように、文人の伝統的な言い回しです。張潮はそこから一歩進めて、世の大きな不公平は酒では消えず、剣、つまり断固とした力でしか正せないと言います。ここでの剣は、実際の武力というより、不正を断ち切る気概の象徴と読むのがよいでしょう。友人の周星遠は杜甫の「剣を看て杯を引くこと長し」を引いて応じています。自分のうさを晴らすことと、世の中の理不尽に向き合うことは別の仕事だと、区別して考えさせてくれます。
この章句が説くこと
義憤不平酒剣処世
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