酔古堂剣掃 / 集法・喜びに乘じて輕諾すべからず
不可乘喜而輕諾,不可因醉而生嗔;不可乘快而多事,不可因倦而鮮終。
新字:不可乗喜而軽諾,不可因酔而生嗔;不可乗快而多事,不可因倦而鮮終。
書き下し
喜びに乘じて輕々しく諾すべからず、醉ひに因りて嗔りを生ずべからず。快に乘じて事を多くすべからず、倦むに因りて終はりを鮮くすべからず。
現代語訳
うれしさにまかせて軽々しく引き受けてはいけません。酔いにまかせて怒りを起こしてはいけません。気分のよさにまかせて余計なことに手を出してはいけません。疲れにまかせて物事を最後までやり遂げずに終わらせてはいけません。
解説
気分の波に判断を任せてはならないと、四つの場面で戒めた一則で、菜根譚にもほぼ同じ句があります。喜び、酔い、快、倦みという、一時の感情や体の状態が、人の判断を狂わせます。うれしいと安請け合いをし、酔うと怒りっぽくなり、調子がよいと手を広げすぎ、疲れると投げ出してしまいます。鮮終は、終わりを全うすることが少ないという意味です。気分が高ぶっているときや沈んでいるときは、大事な約束や決断を一晩置いてからにする。それだけで防げる失敗は少なくありません。
この章句が説くこと
節制慎重修身感情約束
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集法・身を棄てんよりは酒を棄つるに如かず酒入れば舌出で、舌出づれば言失し、言失すれば身棄てらる。余以為へらく、身を棄てんよりは、酒を棄つるに如かず。
-
『酔古堂剣掃』集法・怒る時の言は多く體を失ふ喜ぶ時の言は多く信を失ひ、怒る時の言は多く體を失ふ。
-
『酔古堂剣掃』集綺・花は半開を看る木香盛んに開けば、杯を把りて獨り其の下に坐し、遙かに青奴をして笛を吹かしめ、止だ一小奚を留めて酒に侍せしむ。才かに少しく斟酌すれば便ち退きて、迎春の架の後に立つ。 花は半開を看、酒は微醉に飲む。
-
『酔古堂剣掃』集醒・舞衣は暗に動くの兵戈明らかに紅樓の塚無きの邱壟為るを識るも、迷ひ來りては認めて捨生の岩と作す。直ちに舞衣の暗に動くの兵戈為るを知らば、快く去りて暫く試劍石に同じうせよ。
-
『酔古堂剣掃』集素・但だ半酣を取りて風月と侶と為す酒を飲むには真に認むべからず、真に認むれば則ち大いに醉ひ、大いに醉へば則ち神魂昏亂す。 書に在りては沉湎と為し、詩に在りては童羖と為し、禮に在りては豢豕と為し、史に在りては狂藥と為す。 何ぞ如かん、但だ半酣を取りて、風月と侶と為すに。
-
『幽夢影』巻下・酒は好むべくも座を罵るべからず酒は好むべくも座を罵るべからず、色は好むべくも生を傷るべからず、財は好むべくも心を昧ますべからず、氣は好むべくも理を越ゆべからず。