幽夢影 / 巻下・月を玩ぶの法
玩月之法:皎潔則宜仰觀,朦朧則宜俯視。
新字:玩月之法:皎潔則宜仰観,朦朧則宜俯視。
書き下し
月を玩ぶの法は、皎潔なれば則ち宜しく仰ぎ觀るべく、朦朧たれば則ち宜しく俯して視るべし。
現代語訳
月を楽しむ方法は、こうです。月が白く澄みきっているときは、仰いで眺めるのがよく、おぼろにかすんでいるときは、うつむいて見下ろすのがよいのです。
解説
月見の心得を、澄んだ月とおぼろ月とで分けて示した短い一則です。皎潔は白く清らかに輝くさまで、朦朧はぼんやりかすんでいるさまです。澄んだ月はまっすぐ見上げて、その輪郭と光をそのまま味わいます。おぼろ月は見下ろせと言うのですから、水面に映る影や、地面に落ちるやわらかな光を楽しむということだと読めます。友人の孔東塘は「月見の極意をつかんでいる」と評しています。同じ対象でも、状態に応じて見る角度を変えると、別の美しさが見えてきます。人や仕事についても、調子のよいときと悪いときで接し方を変えるのは、一つの知恵と言えるでしょう。
この章句が説くこと
風雅月見閑適自然見方
関連する章句
-
『幽夢影』巻上・樓上に山を看る樓上に山を看、城頭に雪を看、燈前に月を看、舟中に霞を看、月下に美人を看るは、另に是れ一番の情境なり。
-
『幽夢影』巻上・花を賞するには佳人に對す花を賞するには宜しく佳人に對すべし、月に醉ふには宜しく韻人に對すべし、雪に映ずるには宜しく高人に對すべし。
-
『幽夢影』巻下・鏡中の影は著色の人物鏡中の影は、著色の人物なり。月下の影は、寫意の人物なり。鏡中の影は、鉤邊の畫なり。月下の影は、沒骨の畫なり。月中の山河の影は、天文中の地理なり。水中の星月の象は、地理中の天文なり。
-
『幽夢影』巻上・月下に禪を談ず月下に禪を談ずれば、旨趣益ます遠し。月下に劍を説けば、肝膽益ます眞なり。月下に詩を論ずれば、風致益ます幽なり。月下に美人に對すれば、情意益ます篤し。
-
『幽夢影』巻上・隙中に月を窺ふが如し少年の讀書は、隙中に月を窺ふが如し。中年の讀書は、庭中に月を望むが如し。老年の讀書は、臺上に月を玩ぶが如し。皆閲歷の淺深を以て、得る所の淺深と爲すのみ。
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。