幽夢影 / 巻上・一部の新書を著し得れば
著得一部新書,便是千秋大業;注得一部古書,允爲萬世宏功。
新字:著得一部新書,便是千秋大業;注得一部古書,允為万世宏功。
書き下し
一部の新書を著し得れば、便ち是れ千秋の大業なり。一部の古書に注し得れば、允に萬世の宏功爲り。
現代語訳
一冊の新しい書物を書き上げることができれば、それはもう千年の大事業です。一冊の古い書物に注釈を付けることができれば、まことに万世に残る大きな功績です。
解説
書物を書くことと、古典に注を付けることの価値を並べて称えた対句です。新しい書を著すのは、自分の考えを形にして後世に残す仕事です。古典に注を付けるのは、昔の言葉を読み解いて、次の世代が読めるように橋を架ける仕事です。どちらも一時の名声ではなく、千年、万年にわたって人の役に立つ営みだと言います。友人の黄交三は、世の中で難しいことは注釈が第一で、ごく平凡な書物からでも作者の苦心を読み取らねばならないと言います。張竹坡は、注釈そのものより、落ち着いて注に打ち込める時と場所を得ることが難しいと嘆いています。先人の仕事を受け継ぎ、次へ渡すことも立派な創造です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
学問読書著述注釈伝承
関連する章句
-
『幽夢影』巻上・古の今に傳はらざる者古の今に傳はらざる者は、嘯なり、劍術なり、彈棋なり、打球なり。
-
『弁名』序孔子既に歿し、百家坌涌し、各々其の見る所を以て之に名づけ、物始めて舛ふ。独り七十子の徒、慎みて其の師説を守りて以て之を伝ふ。漢代に迨びて、人ごとに経を異にし、経ごとに家を異にす。其の言、人人殊なると雖も、要は皆七十子の徒の伝ふる所なり。舛ふ者有りと雖も、此の失ふ所、彼或いは存する者も亦た之有り。彼此を参へて以て之を求むれば、名と物と舛はざるに庶からんか。旧きを伝ふるが故なり。馬融・鄭玄、諸家に旁通し、稽定する所有り、斯に擯斥する所有り。是に於てか顓門の学廃れて、名と物と舛ふ者、復た得て識るべからず。伝はらざる所多きが故なり。豈に惜しからずや。
-
『徂徠先生答問書』序余、子遷に語りて曰く、焉を伝へんかな。高きに登るは必ず卑きよりす。此の書国字を以て行はると雖も、豈に後世に裨益せざらんや。且つ夫れ其の門に入るに非ずんば、室家の美を観るべからず。先生の門牆大いに高しと雖も、我と吾子との如きも、亦た皆其の説を与り聞くを得たり。而して先生の他の著す所の如きは、亦た未だ遽かに暗を以て人に投ずべからず。則ち此の書庶はくは先容と為らんか。余忝くも邦君の末に在るを以て、後生を延きて一たび之を諭すを得ず。乃ち其の端に序し、以て子遷の挙を善みし、且つ以て志の同じきを言ふ。乙巳の春、西台滕忠統撰す。
-
言志四録・言志晩録 第二十五条 学の次第と本体学に次第有るは、猶ほ弓を執り箭を挟み、引満して発するがごとし。直ちに本体を指すは、猶ほ懸くるに正鵠を以てし、必中を期するがごとし。
-
『学則』答屈景山書不佞其の是くの若きを懲り、凡そ師友の素有るに非ずして来たりて相問難する者に値ふ毎に、一切対を置かず。是れ不佞の常なり。不佞往歳蘐園随筆を作る。其の時、識見未だ定まらず、争心未だ消えず。然れども随筆の作は、自ら書して以て自ら翫び、聊か以て間を消すのみにして、初めより以て人に示すに非ざるなり。独り奈んせん、誤りて剞劂の手に堕ち、遂に諸を海内に公にす。海内の諸君子、因りて不佞を弁を好む者と謂ふ。不佞の心に非ざるなり。今来喩を観るに、亦た対を置かざるの例に在り。然りと雖も、足下既に争心無きを以て告げられ、而して君家の先生は乃ち不佞が髫年の時より私心に郷往する所なれば、則ち何ぞ必ずしも恝然たらんや。亦た唯人心の面の如き、不佞豈に能く諸を足下に喩さんや。但だ不佞の李王を取る所以の故を言ひて以て来意に酬いん。其の取舍の如きは、乃ち足下に在り。唯足下之を択べ。
-
うひ山ぶみ・本文上ノ件ところどころ、圏の内に、かたかなをもてしるししたるは、いはゆる相じるしにて、その件リ々にいへることの、然る子細を、又奥に別にくはしく論ひさとしたるを、そこはこゝと、たづねとめて、しらしめん料のしるし也、世に物まなびのすぢしなじな有て云々、物学とは、皇朝の学問をいふ、そもそもむかしより、たゞ学問とのみいへば、漢学のことなる故に、その学と分むために、皇国の事の学をば、和学或は国学などいふならひなれども、そはいたくわろきいひざま也、みづからの国のことなれば、皇国の学をこそ、たゞ学問とはいひて、漢学をこそ、分て漢学といふべきことなれ、それももし漢学のこととまじへいひて、まぎるゝところにては、皇朝学などはいひもすべきを、うちまかせてつねに、和学国学などいふは、皇国を外にしたるいひやう也、もろこし朝鮮於蘭陀などの異国よりこそ、さやうにもいふべきことなれ、みづから吾国のことを、然いふべきよしなし、すべてもろこしは、外の国にて、かの国の事は、何事もみな外の国の事なれば、