幽夢影 / 巻上・人生此くの如くんば全福と云ふべし
值太平世,生湖山郡,官長廉靜,家道優裕,娶婦賢淑,生子聰慧。人生如此,可云全福。
新字:値太平世,生湖山郡,官長廉静,家道優裕,娶婦賢淑,生子聰慧。人生如此,可云全福。
書き下し
太平の世に値ひ、湖山の郡に生まれ、官長は廉靜、家道は優裕、婦を娶れば賢淑、子を生めば聰慧。人生此くの如くんば、全福と云ふべし。
現代語訳
太平の世に巡り合い、湖や山の美しい土地に生まれ、上に立つ役人は清廉で穏やか、家の暮らし向きはゆとりがあり、妻を迎えれば賢くしとやかで、子が生まれれば聡明である。人生がこのようであれば、完全な幸福と言えるでしょう。
解説
人生の完全な幸福の条件を六つ並べた一則です。時代が平和であること、住む土地の景色が美しいこと、治める役人が清廉であることは、自分の力ではどうにもならない外の条件です。家計のゆとり、良い妻、賢い子は、家の中の条件です。どれか一つが欠けても全福とは言えないところに、その得がたさが表れています。友人の許筱林は、これを粗野で愚かな者が受けたら造物主に申し訳ないと言い、李荔園は、賢い妻も聡い子も長生きしてこそで、そうでなければ福は全うされないと付け加えています。自分に与えられている条件を数えてみると、思った以上に多くの福に気づくかもしれません。
この章句が説くこと
幸福家訓処世太平家族
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