幽夢影 / 巻上・書を雨師に致さんと欲す
吾欲致書雨師:春雨,宜始於上元節後(觀燈已畢),至淸明十日前之內(雨止桃開),及穀雨節中;夏雨,宜於每月上弦之前,及下弦之後(免礙於月);秋雨,宜於孟秋、季秋之上下二旬(八月爲玩月勝境);至若三冬,正可不必雨也。
新字:吾欲致書雨師:春雨,宜始於上元節後(観灯已畢),至清明十日前之内(雨止桃開),及穀雨節中;夏雨,宜於毎月上弦之前,及下弦之後(免礙於月);秋雨,宜於孟秋、季秋之上下二旬(八月為玩月勝境);至若三冬,正可不必雨也。
書き下し
吾書を雨師に致さんと欲す。春雨は、宜しく上元節の後(燈を觀ること已に畢る)に始まり、淸明の十日前の内(雨止みて桃開く)に至り、及び穀雨の節中なるべし。夏雨は、宜しく每月の上弦の前、及び下弦の後(月を礙ぐるを免る)なるべし。秋雨は、宜しく孟秋・季秋の上下二旬(八月は月を玩ぶ勝境爲り)なるべし。三冬に至るが若きは、正に必ずしも雨ふらざるべし。
現代語訳
私は雨の神に手紙を出したいと思います。春の雨は、上元節の後(灯籠見物がもう終わっています)から降り始め、清明の十日前まで(雨がやんで桃が咲きます)、それと穀雨の節気の間に降るのがよいでしょう。夏の雨は、毎月の上弦の前と下弦の後(月見の妨げになりません)に降るのがよいでしょう。秋の雨は、七月と九月の上旬と下旬(八月は月見の最もよい時期です)に降るのがよいでしょう。冬の三か月にいたっては、別に降らなくてもかまいません。
解説
雨の神、雨師に宛てて、雨の降り方を注文する手紙を書くという空想の一則です。春は正月の灯籠見物が済んでから、桃の花が開く前までと、穀物を潤す穀雨の頃に降ってほしいと言います。夏は月の明るい上弦から下弦の間を避け、秋は月見の名所である八月をまるごと外してほしいと頼みます。冬はいっそ降らなくてよいというのも、花見と月見を何より大切にする文人らしい勝手さです。友人の孔東塘は、本当にこの手紙を書くなら自分が届け役になると応じています。暮らしの楽しみから逆算して季節を眺めると、天気の見え方まで変わってきます。
この章句が説くこと
風雅四季閑適月見機知
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