幽夢影 / 巻上・假使夢能く自ら主らば
假使夢能自主,雖千里無難命駕,可不羨長房之縮地;死者可以晤對,可不需少君之招魂;五嶽可以臥遊,可不俟婚嫁之盡畢。
新字:仮使夢能自主,雖千里無難命駕,可不羨長房之縮地;死者可以晤対,可不需少君之招魂;五嶽可以臥遊,可不俟婚嫁之尽畢。
書き下し
假使夢能く自ら主らば、千里と雖も駕を命ずるに難きこと無く、長房の縮地を羨まざるべし。死者も以て晤對すべく、少君の招魂を需めざるべし。五嶽も以て臥遊すべく、婚嫁の盡く畢るを俟たざるべし。
現代語訳
もし夢を自分で思いどおりにできるなら、千里の道でもたやすく出かけられ、長房(後漢の費長房)の縮地の術をうらやむこともありません。死んだ人とも向き合って語り合えるので、少君(漢の方士)の招魂の術を求めることもありません。五岳の名山も寝ながら遊べるので、子どもの婚礼をすべて終えるまで待つこともありません。
解説
夢を自由に操れたらという空想を、三つの故事と組み合わせた一則です。費長房は仙人から地を縮める術を授かったと伝わる後漢の人です。少君は漢の武帝に仕えた方士で、ここでは亡き人の魂を招く術の代表として挙げられています。最後は、子の婚嫁を済ませてから五岳を巡ったという後漢の向長の話を踏まえ、夢の中で寝ながら山水を旅する臥遊ができれば待つ必要はないと言います。友人の張竹坡は、夢を自分で操れれば生と死を一つにし、人と鬼に通じられる、まことに道を見た言葉だと評しています。想像力は、人を時間や距離から解き放つ力を持っています。
この章句が説くこと
夢想像故事閑適隠逸
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