幽夢影 / 巻上・人は以て癖無かるべからず
花不可以無蝶,山不可以無泉,石不可以無苔,水不可以無藻,喬木不可以無藤蘿,人不可以無癖。
書き下し
花は以て蝶無かるべからず、山は以て泉無かるべからず、石は以て苔無かるべからず、水は以て藻無かるべからず、喬木は以て藤蘿無かるべからず、人は以て癖無かるべからず。
現代語訳
花には蝶がいなければなりません。山には泉がなければなりません。石には苔がなければなりません。水には藻がなければなりません。高い木には藤や蔦がからんでいなければなりません。人には癖がなければなりません。
解説
自然の取り合わせを五つ並べ、最後に人には癖が欠かせないと結んだ一則です。ここでいう癖は悪い習慣ではなく、何かに打ち込んで離れられないほどの愛着、つまり偏愛のことです。花に蝶、山に泉がいてこそ景色が生きるように、人も何かへの偏愛があってこそ味わいが出るという見方です。友人の黄石閭は、伝えるに足る事をなす人は皆癖を持つという句を引いています。明末から清初の文人たちは、癖のない人とは交わるなと言うほど、偏愛を人柄の深さの証と考えました。仕事でも、何かに夢中になれる人の強さは侮れません。
この章句が説くこと
風雅趣味個性自然偏愛
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