養生訓 / 巻第七・用薬
一入門にいへるは、藥を服するに、病上部にあるには、食後に少しづつ服す。一時に多く飲むべからず。病中部に在るには、食遠に服す。病下部にあるには、空心にしきりに多く服して、下に達すべし。病四肢血脈にあるには、食にうゑて日中に宜し。病、骨髓に在るには、食後夜に宜し。吐逆して藥を納めがたきには、只一すくひ、少しづつしづかに飮むべし、急に多く飮むべからず。是藥を飮む法なり。知らずんばあるべからず。
新字:一入門にいへるは、薬を服するに、病上部にあるには、食後に少しづつ服す。一時に多く飲むべからず。病中部に在るには、食遠に服す。病下部にあるには、空心にしきりに多く服して、下に達すべし。病四肢血脈にあるには、食にうゑて日中に宜し。病、骨髄に在るには、食後夜に宜し。吐逆して薬を納めがたきには、只一すくひ、少しづつしづかに飲むべし、急に多く飲むべからず。是薬を飲む法なり。知らずんばあるべからず。
書き下し
一入門にいへるは、薬を服するに、病上部にあるには、食後に少しづつ服す。一時に多く飲むべからず。病中部に在るには、食遠に服す。病下部にあるには、空心にしきりに多く服して、下に達すべし。病四肢血脈にあるには、食にうゑて日中に宜し。病、骨髄に在るには、食後夜に宜し。吐逆して薬を納めがたきには、只一すくひ、少しづつしづかに飲むべし、急に多く飲むべからず。是薬を飲む法なり。知らずんばあるべからず。
現代語訳
『医学入門』に言うことには、薬を飲むのに、病が上部にあるときは、食後に少しずつ飲みます。一度に多く飲んではいけません。病が中部にあるときは、食事の間の遠いときに飲みます。病が下部にあるときは、空腹時にしきりに多く飲んで、下に届かせるべきです。病が手足や血脈にあるときは、空腹で日中に飲むのがよいでしょう。病が骨髄にあるときは、食後の夜がよいでしょう。吐き気があって薬を受けつけにくいときは、ただ一すくいずつ、少しずつ静かに飲むべきで、急いで多く飲んではいけません。これが薬を飲む法です。知っておかなければなりません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第七・用薬一凡薬を服して後久しく飲食すべからず。又薬力のいまだめぐらざる内に酒食を忌む。又薬を飲みてねぶり臥すべからず。ねぶれば薬力めぐらず、滞りて害となる。必ず戒むべし。一凡薬を服する時は、朝夕の食、常よりも殊につつしみえらぶべし。あぶら多き魚鳥獣、なます。さしみ、すし、肉ひしほ、なし物、なまぐさき物、ねばき物、かたき物、一切の生冷の物、生菜の熟せざる物、ふるくけがらはしき物、色あしく臭あしく味変じたる物、生なる菓、つくりたる菓子、あめ、砂糖、もち、だんご、気をふさぐ物、消化しがたき物、食ふべからず。又薬を飲む日は酒を多く飲むべからず。飲まざるは尤よし。酒力薬に勝てば験なし。醴も飲むべからず。日長き時も、昼の間菓子点心など食ふべからず。薬力のめぐる間は食を忌むべし。点心をくらへば気を塞ぎて、昼の間薬力めぐらず。又死人産婦など、けがれ忌むべき物を見れば気をふさぐ故、薬力めぐりがたく滞りやすくして、薬のしるしなし。いましめて見るべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一前食未だ消化せずば、後食相つぐべからず。一薬を服する時、あまき物、油膩の物、獣肉、諸菓、餅餌、生冷の物、一切気を塞ぐ物、食ふべからず。服薬の時多く食へば、薬力とどこほりて力なし。酒は只一盞に止まるべし。補薬を服する日、ことさら此類いむべし。凡薬を服する日は、淡き物を食して、薬力をたすくべし。味濃き物を食して、薬力を損ずべからず。
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『養生訓』巻第七・用薬一又曰、薬を煎ずるに砂罐を用ふべし。やきものなべなり。又曰人をえらぶべし。いふ意は、心謹信なる人に煎じさせてよしとなり。粗率なる者に任すべからず。一薬を服するに、五蔵四肢に達するには湯を用ふ。胃中にとどめんとせば散を用ふ。下部の病には丸に宜し。急速の病ならば湯を用ふ。緩々なるには散を用ふ。甚緩き症には丸薬に宜し。食傷腹痛などの急病には、煎湯を用ふ。散薬も可なり、丸薬はにぶし。もし用ひば、細に噛くだきて用ふべし。
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『養生訓』巻第七・用薬一補湯は、煎湯熱き時、少しづつ飲めばつかへず。少しづつ飲みて、ゆるやかに験を得べし。一時に多く服すべからず。補湯を服する間、殊に酒食を過さず、一切の停滞する物くらふべからず。酒食滞塞し、或は薬を服し過し、薬力めぐらざれば、気をふさぎ、腹中滞り、食を妨けて病をます。しるしなくして害あり。故に補薬を用ふる事、其節制むづかし。良医は、用ひやう能くして、なづまず。庸医は、用ひやうあしくして、滞る。古人は、補薬を用ふる其間に、邪を去る薬を兼ね用ふ。邪気去れば、補薬にちからあり。補に専一なれば、なづみて益なく、かへつて害あり。是、古人の説なり。
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『養生訓』巻第七・用薬一身体短小にして、腸胃小なる人、虚弱なる人は、薬を服するに、小服に宜し。されど一匁より少かるべからず。身体長大にて、腸胃ひろき人、つよき人は、薬大服に宜し。一小児の薬に、水をはかる盞は、一服の大小によりて、是も水五十匁より、五十五匁入るほどなる盞を用ふ。是亦、盞の重さを除きて、水の重さなり。利湯は、一服に水一盞入れ、七分に煎じ、二三度に用ふ。滓は、捨つべし。補湯には、水一盞半を用ひて、七分に煎じ、度々に熱服す。是亦滓は捨つべし。或は、滓にも水一盞入れ、半盞に煎じつめて用ふべし。
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『養生訓』巻第七・用薬一上中部の丸薬は、早く消化するをよしとす。故に小丸を用ふ。早く消化する故なり。今新なる一法あり、用ふべし。末薬をのりに和して、つねの如くに丸ぜず、線香の如く長さ七八寸に、手にてもみて引きのべ、線香より少し大にして日に干し、生干の時、長さ一分余にみじかく切りて丸ぜず、其まま日にほすべし。是一づつ丸じたるより消化しやすし。中部を治するに此法宜し。下部に達する丸薬には此法宜しからず。此法、一粒つつ丸ずるよりはか行きて早く成る。
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